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飲み屋で予習復習の日々
アナウンサーに限らず、Bリーグの中継を担当するプロフェショナルは、水面下で努力を重ねている。松本は2017-18シーズンまで主に新潟アルビレックスBBの試合を担当していた。彼は当時をこう振り返る。
「金曜に長岡入りして、練習取材をしていました。制作の方も設営などの準備があるので前日入りしています。だから長岡駅近辺の飲み屋で『マイナス第1クォーター』です。試合後の夜はパソコンを持ちこんで、映像を見ながら第5クォーター。スイッチャー、ディレクターなど10人くらいでやっていました」
試合はもちろん第4クォーターまでだが、プロの努力はその前後にもある。真剣な没頭が放送をレベルアップさせていく。松本に理想のバスケ中継を尋ねると、こんな答えが返ってきた。
「もっと駆け引きを伝えられたらいいと思います。ただ入った、入らなかったではない“それ以上”を伝えたい。守り方をこう替えたから、このプレーを選びましたとか――。解説者のコメントを拾って、噛み砕ければいいですね」
松本はこう続ける。
「映像には優位性があります。だから『その場面を見てみましょうか』と拾えれば分かりやすくなる。それをさっと出せるように、制作みんなのレベルが上がればいいと思いますね」
中継もコート内と同様にチームを組んで行うもの。質を上げるには、そこに携わる全員がバスケを深く知る必要がある。その深さが放送を通して視聴者に伝われば、日本のバスケ文化はより豊かで楽しいものになるだろう。
写真:深野未季/文藝春秋