今はあらゆるスポーツを一日中、テレビやインターネットで見られる時代になった。中でも「激変」が起こったのはバスケットボールの視聴環境だ。
2016年9月のBリーグ開幕以後、インターネット放送のバスケットLIVE(旧スポナビライブ)を中心に、B1・B2の全カードが放送されている。5月11日に開催されるチャンピオンシップ決勝戦は、NHK総合で生中継も行われる。今夏のワールドカップ、そして2020年の東京オリンピックでも、バスケは広く放送されるだろう。
そんな時代に、バスケを伝える側は何を考えているのか――。
今回は松本圭祐アナウンサーに、実況の極意を語ってもらった。彼は野球、ラグビーなど他競技の実況経験も持っているが「バスケ濃度」は放送界でも随一。自らも部活、サークルでプレーを楽しんでいた。
野球は“間”がある。バスケは“間”がない
単刀直入に問う。バスケ中継の特徴とは何か?
「野球は決定的に“間”があるんです。でもバスケはタイムアウト、フリースローくらいしか間が無い。資料を見る時間もほぼ無い」
特に試合の後半は「流れ」以外のコメントをする間が無くなっていく。もっとも間があれば入れたい情報は当然ある。シーズン途中に加入した選手なら、経歴や特徴を伝えねばならない。選手のフリースロー成功率、3ポイントシュート成功率も需要の高いデータだ。
ただしバスケはとにかくテンポが速いスポーツ。紙をめくって情報を探す時間がない。松本は生年月日、身長体重、出身校など両チームの情報を、極小のフォントで1枚にまとめている。一般人にはとても読めない「プロ仕様」の資料だ。
シュートが決まってもすぐ次に行く
サッカーならばアナウンサーは得点者を必ず伝える。しかし松本のバスケ実況は「シュートを打った」を伝え、「決まった」ことは簡単にしか触れない。次のプレーがすぐ始まり、2、3秒で次の得点が決まる場面もある競技だからだ。
松本は言い切る。
「僕はすぐ次に行きます。手から離れた瞬間に、選手の名前を言えていないと遅れるんです。決まった瞬間に“誰それのシュート”と言っても遅い」