「どうして私には家族がいないの? どうして……どうして……!」「お前にはもう、そばに家族はおらん。だがわしらがおる、一緒におる」「おじいさん、おじいさん!」
それまでの張りつめていた糸が切れたように号泣する9歳のなつ(粟野咲莉)。そんななつを抱きしめる泰樹(草刈正雄)……いやあ、いい最終回でした。え、まだ終わってない?
そうでした、子ども時代から時が飛びなつ役は広瀬すずにシフト。過去の朝ドラヒロイン勢に加えて、18歳になったなつを支えるイケメン俳優陣もザクザク現れ、ますます盛り上がりを見せるNHKの朝ドラ『なつぞら』。
ん、本当に盛り上がってます? Webや雑誌の記事のアツさはともかく、私を含めた視聴者の頭にはソコソコのモヤモヤが生まれている気もするのですが。
朝ドラあるあるの「ヒロイン至上展開」開始
まず整理したいのがなつのキャラクター。
父の戦友・柴田剛男(藤木直人)に連れられ、北海道・十勝へとやってきた奥原なつ。身を寄せる柴田牧場では「私、なんでもします、働きます!」と早朝から牛の世話を手伝い、牧場主・泰樹の娘で剛男の妻・富士子(松嶋菜々子)に「おばさん、ありがとう!」といきなり抱きついて「なんだかあの子、子どもらしくない」と言わしめる。
9歳のなつはただの健気な戦災孤児ではなく、生きるため、生き抜くためにどんなことでもするたくましさを宿し、ある種のあざとささえ身につけた子どもとして描かれていました。
それから9年後。18歳になったなつは柴田牧場の仕事を手伝いながら、農業高校で酪農を学んでいます。
生まれたばかりの子牛が死にかけた時には、牛のプロ、泰樹が諦めても人工呼吸で子牛の命を救い、その様子をクラスメイトのよっちゃんを牛に見立ててクラス全員の前で実践披露。演劇の大会ではいきなり主役に指名され、舞台を観た泰樹はいとも簡単に拒否していた農協への加入を決意。さらに生き別れの兄を探しに行った東京では、アニメーション制作スタジオで描いた絵をプロに褒められる。
ああ、これはアレですね。朝ドラあるあるの「ヒロイン至上展開」。
どんなことをしてでも生き抜こうとする力強さと、孤独をたたえた瞳が印象的だった9歳のなつ。開拓民一世である泰樹は、その瞳の奥に誰にも頼らず生きてきたかつての己の姿を見て彼女を受け容れ、1人の人間として認めたのでしょう。