ここ10年で多くの人の生活を変えたもののひとつがGoogleマップじゃないだろうか。通常の地図機能に現在地表示はもちろん、航空写真やストリートビューにサクッと切り替え。路線バスを含めた乗換案内や時刻表、カーナビにもなる経路案内や渋滞状況も一発把握。店を検索すれば定休日や営業時間が示され、公式サイトのリンクにも飛べる。飲食店を探すのもノイズだらけのグルメサイトを見るよりGoogleマップで「ラーメン」「居酒屋」と検索した方がまともな情報に辿りつける。4月から多少仕様が変わりやや使い辛くなったとはいえ、もはやこれなしの生活は考えられない。

 5月1日に元号が変わったばかりだが、令和元年から遡ること30年前の平成元年、ネットすらない時代にこれらの情報を得るにはどうしていたか?もちろん紙媒体である。文庫判の都市地図は街で働く者の必携アイテム。移動の電車の時刻はとりあえず駅で貰えるポケット時刻表を財布に入れておき、会社に常備してある時刻表を開いて大体の所要時間をチェック。とはいえ今のように「○時○分に乗れば△△駅で乗り換えて×時×分に着く」とすぐわかるわけじゃないので、早目早目の行動が基本だった。その後90年代になり首都圏や関西圏の私鉄を含む全列車を網羅した『MATT時刻表』『KATT時刻表』や『東京時刻表』が出回ると、鞄に忍ばせていたビジネスマンも少なくないはず。グルメに関してはあくまで首都圏の話だが、女性なら昭和63年創刊の『Hanako』。男性ならB級グルメを世に広めた文春文庫ビジュアル版『スーパーガイド 東京B級グルメ』あたりが情報源。90年代以降はここに『東京ウォーカー』が加わった。

若者の圧倒的支持を得た「ぴあmap」

『ぴあmap’89』。表紙は『ぴあ』と同じく及川正通氏による当時話題の人たち。

ADVERTISEMENT

 そしてもう一冊、この頃若者の間で圧倒的支持を得たのがムック本の『ぴあmap』。『ぴあ』と言えばあらゆるエンタメ情報を網羅した情報誌の先駆けだが、昭和54年からカラーページ「ぴあmap」が月1回掲載されるようになった。その総集編としてムック版が昭和57年から毎年発行されたのである。昭和63年には関西版が登場。以後東海版をはじめハワイ版、グアム・サイパン版、韓国版など若者の海外旅行が一般化するのに合わせて海外版も多数刊行された。また『ぴあmapホール 劇場・スタジアム』『ぴあmapグルメ』などテーマが広がっていき、ハンディサイズの『ぴあmap文庫』も人気を集めた。