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特集私が令和に語り継ぎたい「平成の名言」

ニートの名言「働いたら負けかなと思ってる」をマジで笑えなくなった“平成の終わり”

「年収600万円、埼玉にマイホーム」すら困難に……

2019/05/01

 私は日本の都会の通勤時間帯の電車が嫌いである。ただし単純な混雑だけが理由ではない。胃が悪いらしき病的な口臭やストレス臭を漂わせた人や、生気に欠けた暗い目をした人が極端に多く、不吉かつ異様な雰囲気が充満しているからだ。海外から帰国したり地方から上京した直後にこの手の電車に乗り、「スーツを着たゾンビ」さながらの集団を目にすると、生命エネルギーをゴリゴリと削られるような錯覚すら覚える。

平成30年間の“悲しい現実”にぴったりの名言

 しかも、彼らがそんな姿になってまで通勤した先では、しばしば長時間労働やパワハラ、理不尽な顧客のクレームが待っている。たとえ労働者が主観的には「がんばって」いても、日本人の労働生産性は先進7カ国のうちで最低だ。多くの人は退屈で非効率的な行為を「仕事」であると必死で思い込もうとしているにすぎない。得られる年収は300~400万円かそれ以下という人も少なくない。

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 労働市場の流動性は低く、健康を害するなどして一度ドロップアウトすると、以前と同様の水準の仕事に復帰することは難しい。なので女性の結婚や出産も簡単ではない。日本の保育環境のもとでは妻側が出産後に退職や非正規労働への転落を余儀なくされる場合も多く、生活は苦しくなる。

 それでも社会の未来に期待を持てるならいいが、高齢化は加速度的に進んでおり、現時点ですら現役世代約2人で65歳以上の老人1人を支える計算だ。現役世代がストレスフルで非効率的な労働を通じて稼いだわずかなカネは、未来の日本を素晴らしいものにするためではなく、老人を養うために注ぎ込まれていく。

 平成の30年間に進行した悲しい現実である。そんなことを考えていると、15年前に登場したある名言に圧倒的な説得力を感じてしまうのだ。それはすなわち――。

「働いたら負けかなと思ってる」