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特集私が令和に語り継ぎたい「平成の名言」

「倍返し」「じつに面白い」「じぇじぇじぇ」あのセリフが生まれて平成ドラマは変わった

一番推したい平成の名ゼリフは変幻自在のあの"6文字"

2019/04/27

「同情するなら金をくれ!」とツインテールで叫んだ安達祐実も今やすっかり大人の女優。「僕は死にましぇん!」と、トラックの前に飛び出した武田鉄矢は善人からクソ野郎までこなす性格俳優として活躍中ですし、「そこに愛はあるのかい?」のあんちゃんこと江口洋介もロン毛をバッサリ切ってスーツをキメるイケおじの立ち位置に。

ドラマ『半沢直樹』の新しさがヒットドラマを生み出した

 平成の民放ドラマを最高視聴率で切り取ってみると、トップは2013年(平成25年)にオンエアされた『半沢直樹』(TBS)。銀行内部の人間模様を描いたこの作品は、最終回で42.2%(ビデオリサーチ調べ)という驚異の数字を叩きだしました。

 ドラマ『半沢直樹』での名ゼリフといえば、堺雅人演じる主人公・半沢直樹の「倍返しだ!」。

主人公・半沢直樹を演じた堺雅人 ©文藝春秋

 汚い手を使って自分や同僚たちを苦しめ貶めてきた大和田常務(香川照之)に、取締役たちの前で半沢が土下座を促し、大和田……というか、香川照之が顔芸満載の芝居で頭を床につける場面では、テレビの前のビジネスマンたちが半沢に自らの姿を重ね、勝利の雄たけびをあげたとか。

『半沢直樹』の新しさは、「水戸黄門的な“お約束”を大真面目にやったこと」。

 勧善懲悪、悪い奴は悪い、最後はガツン!とカタルシス。ミステリーも恋愛要素もスルーし、テーマを「大逆転劇」に特化した作風は、それまで日曜の夜にドラマを観なかったビジネスマンのハートをがっちり掴みました。

 これに活路を見出したTBSは、日曜劇場(日曜21時~)をそれまでの「ホームドラマ」主体から「男たちのお仕事ドラマ」メイン枠へとシフトし、『半沢直樹』と同じく池井戸潤原作の『下町ロケット』シリーズや『ルーズヴェルト・ゲーム』、『陸王』などのヒットドラマを次々と送り出します。

香川照之に続け! 吉川晃司もスーツ姿で田んぼ刈り

 この一連の流れが平成のドラマ界にもたらした影響のひとつが「おじさん俳優たちの再活躍」。

 特に日曜劇場の枠では、香川照之の顔芸に負けじと阿部寛、唐沢寿明、役所広司らが芯として濃い演技を見せつけ、それに吉川晃司、安田顕、立川談春、石丸幹二、高橋和也、滝藤賢一、光石研、寺尾聰らがさらに濃い芝居で応えるという、カオスを生み出す様相に。

 カオスと言えば、『下町ロケット』で、吉川晃司演じる帝国重工・財前部長がスーツ姿で田んぼの稲刈りを始めた時はヤバかったですね……スーツて。