冨山 実際、グローバルな世界であろうと、もっとローカルであろうと、それぞれの分野の基礎的な言語能力というのは、やっぱりある。先ほどふれたように当社にはグループにバス会社もあるんですが、地域の観光業をやるにしても、いろんな分野での基礎的な言語能力がいるんです。
そこをとにかく学校では確実にちゃんと教わっていて、ちゃんとクリアしている状況で大学が世に出してあげないと、中途半端なウンチク学問は語れるけど、一番基礎的なことが抜けているという子が増えてしまう。
それが今、教育に私が感じている矛盾なんです。
大学入試の易化で、いまや“中学3年生が学力ピーク説”も
中西 その意味でいうと、ゆとり教育とか、それがとても歪んだ形で卒業生たちの水準の全体レベルを下げている面がありますよね。そのことに対する危機感は、かなり強烈にあります。
冨山 日本のほうが、そういう基礎能力について、欧米よりも低くなってしまいましたから。
中西 アメリカも地域によって違うんですが、小学校からの数学教育というのは、かなりやっているんです。小学校で算数の基本ができていないと許されない、とか。
冨山 日本では、大学で因数分解を補習でやっているそうですから。これは問題です。おそらくあるのは、高校教育が危機なんじゃないかと思うんです。小学校教育、中学校教育は、良くも悪くも役所は頑張るんです。
高校って、さっきも言われたように大学入試で担保されていたんですね。今、入試がどんどんなくなっているので、高校3年間、何もしなくても大学生になれちゃうようなことが起きている。
昔は高校3年のときに学力がピークになるという説がありました。入試のおかげで。そのあと4年間の大学でバカになって社会人になる、なんて言われましたが、今は中学3年で学力ピーク説というのがある。
いろんな意味で人間が成熟して、いろんなものを学ばなきゃいけない高校3年間、大学4年間の7年間が空白になってしまうのでは、中西さんが言われたように、そのあとはきついですね。
中西 きついですよ。そこからもう1回、再教育って、本人も相当、辛い。
冨山 年を取ると教育効果が下がりますからね。本人も困るでしょうけど、産業界はもちろん、社会全体が困る。
中西 会社はできないやつは採らないだけだから、いいんだけど。
冨山 いや、海外で採ればいいだけですしね。
中西 だから、基礎をちゃんとしてくれ、と大学には言っているんです。