「就活ルール廃止」「終身雇用を続けるのは難しい」発言が 大きな波紋を呼んだ経団連・中西宏明会長。 初の著書となる『社長の条件』では、これから激変するであろう キャリア・採用・大学教育について、すべてを語り尽くしている。
 結局、就活はどうなるのか? ビジネスパーソンは今後いかにキャリア形成をすべきか? 対談相手は、東大京大の就職人気ランキング10位(就活サイト・ワンキャリアによる2018年調査結果)のコンサル会社・経営共創基盤(IGPI)のCEOにして、企業再建の第一人者である冨山和彦氏。

◆◆◆

©平松市聖/文藝春秋

なぜ、いま新卒一括採用について疑問を出したのか

冨山 採用といえば、中西さん、新卒一括採用について疑問を出されて、大騒ぎになりましたね(笑)。

ADVERTISEMENT

中西 だから、リクルーター制度なんかも含めて一括採用というのはどうなのかな、と素朴に思ったわけですよ。

冨山 そもそも、問われるべきは本来あるべき姿、ですよね。

中西 もうおっしゃる通りです。

冨山 グローバル企業の日立なら当然だと思いますが、グローバル採用型になっている。

中西 そうならざるを得ないんです。

冨山 ですよね。

中西 ただ、メディアから聞かれるときは、採用が個社の話として聞かれるんですよ。何人採用しますか、といった具合に。例えば新聞などは、それを記事に絶対にしないといけない義務感を持っていますからね。そういう記者が多いでしょう。

 だから、案を作って発表します。でも、もともと採用は、海外でもやっていますから。グローバルに事業をやっていけば、海外の人材をどう活用していくか、ということは当たり前に考えないといけない。

 ただ、彼らはいつ大学を卒業するか、いつ職を求めるのか、というと、日本とはまったく違うわけですよ。

冨山 だいたい、3月卒業じゃないですからね。

中西 そうなんです。だから、日本の卒業時期という前提に立つと、一斉に一括採用ということ自体、違和感があると言わざるを得ないわけです。それが悪いなんてことは、まったく言っていないですよ。悪いとは言わないけれど、違和感がある、とは言わざるを得ないということです。

 グローバルに採用するとすれば、一括採用自体が難しいわけですから。卒業時期が違うんですから。

冨山 新卒一括採用で、これだけでちゃんとやれ、と言われると困っちゃうわけですね。

中西 はい。それが前提で、いつから何をする、という時期が固定されているというのは、やっぱり世界から見るとおかしいと思うわけです。それが、素朴な私の発言の原点だったんです。

冨山 グローバルに将来活躍しようと思っている学生も、同じですよね。海外に留学していたら、卒業時期はずれますからね。

中西 ちょっと振り返ってみると、今から4年ほど前でしょうか。東大が9月卒業を検討している、なんて話が出て来たら大変な騒動になってしまった。結局できなかったですけど、あんな騒動もおかしい、と思うんですよ。