35歳の長谷部が“成長”できたふたつの要因
なぜ、現在35歳の長谷部が過去の自分を超えるような成長ができ活躍できたのか。その要因は二つあるように思う。一つは、代表を引退したことそのものだ。代表を引退したことで、格段に時間の余裕ができた。18/19シーズンが始まってからの18年9月、10月、11月は、日本国内で日本代表戦は行われた。そして、19年に入り1月はUAEでのアジアカップ、3月はまた日本国内で2試合行なっている。
長谷部本人には、私も直接「代表引退と、今季活躍の因果関係は?」と聞いたことがあるし、他の記者陣がたずねるのを複数回聞いたことがある。どの時も返事は「たまたま自分が好調になった時期と代表引退が重なっただけ」と答えている。だから、本人の実感としては代表引退が今季好調の要因とは言い切れないようだ。だが、普通に考えれば身体を酷使するサッカー選手という職業で1年に5回、ロングフライトを伴う遠征をおこなっていれば疲労だって、時差ボケだって影響するはずだ。
かつて、大迫勇也がケルンで7得点を挙げ、評価を確立しポジションを確固たるものにしたのは16/17シーズンだった。当時、ハリルホジッチジャパンで大迫は代表落選が続いた時期だった。代表選手が抜けるインターナショナルウィークにしっかりと休養をとり、戦術の確認とトレーニングを行えたことが安定した活躍の要因だと大迫は認めていた。さらに、代表に招集されないことで2連休などがとれるため「ヨーロッパを旅行しました。あれはあれで楽しかった」と精神的なリフレッシュに繋がっていたとも話している。
欧州のクラブのメディカルスタッフは、日本代表がその活動に伴って長時間のフライトを強いられることを気にしている、と日本代表関連のドクターから聞いたことがある。疲労も蓄積するし、それが直接的間接的に負傷の要因になるという認識なのだという。代表戦を日本で戦った直後、例えば火曜日に日本で試合をして、土曜日にドイツのどこかでアウェイ戦などとなると先発から外れることが増えるのも、こうしたメディカルの観点からのアドバイスもあるそうだ。となると、代表を引退したことは、本人はそう自覚していなくても、欧州でのプレーにとってプラスだったのだ。