平成の日本サッカーでナンバーワンの名言って何ですか?
編集部の依頼を受けて、まずは名言の「条件」を絞ってみた。(1)公の場で語った(2)当時世間的に大きな反響があった(3)語り継がれている言葉、としよう。
オリンピックで言えば有森裕子の「初めて自分で自分をほめたいと思います」や岩崎恭子の「今まで生きてきたなかで一番幸せ」などといろいろ出てくるが、絞り切れなくなるため“その後の日本サッカー界に強く影響を及ぼしているもの”をもう一つ条件に付け加えてみようと思う。
「肉でも魚でもない」「シンプルに言えば個」も捨てがたいが……
個人的には日本代表を指揮したイビチャ・オシムが、ある親善試合後の会見で語った「肉でも魚でもない試合」(あまり良くないという意味)がかなり好きな部類に入る。見るほう(食べるほうに置き換えてみるといい)とすれば、この味が肉なのか魚なのか、中途半端が一番良くないとも聞こえる。今も根づく深~い言葉である。
本田圭佑がブラジルワールドカップ出場を決めて設定された会見で「シンプルに言えば個」と、本大会に向けてチームメイトに個々のレベルアップを求めた発言も推したい言葉の一つ。「ワールドカップ優勝のためには何が必要か?」というメディアの質問に対する回答だったが、この「シンプルに言えば」がミソであった。「ズバリ言えば」となると自分が出過ぎてしまう。正論を引っ張り出して“みんな気づけよ”というスタンス。仲間のケツを叩くために選んだとすれば、深いマネジメントによる言葉である。“個と言えば本田”“本田と言えば個”という己のキャラクターを強靭化させたことも興味深かった。
しかしながら――。
個人的に挙げた「肉でも魚でもない」「シンプルに言えば個」はすべての名言条件にあてはまるとはいえ、世間的なインパクトとしては弱い。あの言葉と比べてしまうと、どうしても……。