「魂みたいなものは向こうに置いてきた」に続いて語っていたこと
失意にあるときこそ人は試される。カズの言葉はそう教えてくれる。そして彼は会見でこう続けていた。
「(落選を)自分で納得すべきではない。サッカー、それに自分の人生もそうだが、まだやり残していることがある。まだ日本代表の道も残っている」
自分の戦いが新たに始まるという決意。苦い経験で片づけず、発奮材料とする。銀髪は次のチャレンジに向けた決意表明だと思えた。
カズ落選はその後、日本サッカー協会を動かした。大会直前にふるい落とすワールドカップのメンバー選考をあらためた。メンバーを固めて、チーム力を高めていくことに、よりウエイトが置かれるようになったのだ。
カズは今もカズである。
あれから20年以上が過ぎ、52歳にして今なお現役であり続けるのも、失意のたびに自分を奮い立たせてきたからであろう。
そのマインドは、カズに憧れてきた選手にも影響を及ぼしている。その一人、中村俊輔は、やはり2002年の日韓ワールドカップでメンバーから漏れると「気持ちをすぐに切り替えて」夏のセリエA挑戦に踏み切り、その後日本代表の「10番」として長く定着している。悲劇を「点」にして、反骨を「線」とする。このように、カズの姿勢から学んだフットボーラーは少なくない。
今や日本代表にとってワールドカップは夢から現実の舞台になった。カズの誇り、魂は今もなおエンブレムに、サムライブルーのユニフォームに染み込んでいる。その名言と、ともに。