「ハングリー精神を取り戻した」きっかけ
さらに言えば、代表主将としての精神的なストレスから解放されたことも大きいだろう。今季の長谷部は何かから解放されたような、明るい様子がとても印象的だった。代表戦に関しても「練習とかあって見られない」と言うことが多かった。いやいや、国外にいても日本のテレビを鑑賞する方法はいくらでもある。でもあえてそうしないことが、きっと長谷部の今の心境を表している。
もう一つは、長谷部が元来持つ「強気」「闘争心」の部分だ。昨年夏は、ロシアW杯が終わり、代表引退も発表し、バーンアウトとまでは行かなくても少し精神的に難しかったのだろう。「モチベーションをあげるのが難しかった」と話している。結果的に、シーズン開幕から3試合は起用されていない。ただ、その3試合で闘争心に火がついた。「一回外されて、もう一回奮起した」「ハングリー精神を取り戻した」と長谷部自身は表現している。
以前に内田篤人について、長谷部に話をしてもらったことがある。負傷が回復せず日本復帰かドイツ残留か悩む内田に長谷部は「何を弱気になっているんだ」と冗談抜きに欧州残留を強く勧めたのだそうだ。そのやりとりを見ていた内田の親友、吉田麻也は「ハセさんはああ言ってたけど、あの状況で強気だったらすごすぎるよ」と内田の気持ちを慮っている。長谷部の強気、闘争心の一端を見た気がした。
そうした厳しさを自分自身にも求めていたということなのだろう。今季の自分の戦いを「純粋に選手としての評価が問われるシーズン」と位置付けていた。代表という肩書きも、プレッシャーも、負担もなくなり、一選手として欧州でどれだけ通用するかを楽しんでいたようだった。厳しさを楽しんでいたからこそ、のシーズンだったのかもしれない。
誰もが年をとって成長できるわけでもない。肉体を資本とするアスリートともなれば時間はより残酷に迫る。それでも成長を続ける長谷部には勇気付けられるばかりだ。