開幕前から山口の活躍を予言していた男
マウンドでもメンタルが強い、というタイプではなく、キャンプで精神的ストレスによる円形脱毛症を告白したり、ピンチになると唇が紫色になることを村田にいじられたりしていたのは有名な話だ。その山口が30歳を過ぎてからの急成長。変身の理由は謹慎期間にあったように思う。
「謹慎中はプロ野球生活の12年間の行動を考え直す時間だった」
謹慎明けの記者会見で山口はこう語っていたが、もう野球ができなくなるかもしれないという恐怖にさらされたことで、彼の中で何かが変わったのかもしれない。ほぼ強制的にではあるが、しっかりと自分に向き合う時間ができたことで、内面も外面も大人になったのだろう。かつての一本調子は影を潜め、ピッチングスタイルにもいい意味で割り切りがでてきた。
今年から背番号が11に代わったこともあるのかもしれないが、今の山口に重なって見えるのが前人未到の11連続完投勝利をマークした平成の大エース、齋藤雅樹だ。
開幕前から山口の活躍を予言していたのが昨年まで投手コーチを務めていたその齋藤氏だ。齋藤氏は最近のインタビューでも、期待している巨人の若手投手は誰ですか? と聞かれていの一番に山口の名前を挙げている。31歳のFA戦士を若手といっていいかという疑問は残るものの、それだけ山口のポテンシャルを買っていたのだろう。その齋藤氏と山口は開幕前のテレビ番組で対談し、こう話していた。
斎藤「(勝ち星は)何勝だ?」
山口「やっぱり15は勝ちたいですね」
約束の15勝まであと8勝。山口が15勝を挙げるようなことがあれば、5年ぶりのペナントも現実味を帯びてくる。と思っていたら、日テレ出身の今村球団社長からは生命保険のCM(損害保険ではなく……)に推薦される(日刊スポーツより)という珍事も勃発。球団トップからタレント性を買われるなど、解雇寸前だった2年前の今頃からは考えられない状況だ。1億円の罰金も警察沙汰も、力づくで過去の出来事にしつつある。山口の復活は人間どんなどん底からもはい上がれる、人生いつからでも逆転できる、ということを教えてくれている、のかもしれない。
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