「東海大初優勝の陰のMVPは湯澤」と言われる理由
そして最後に重要な要素が、4年生の存在感だ。
これは学生スポーツならではの要素だと思うが、最上級生の4年生の背中というのはチームメイトには特別な意味を持つ。チームが4年生を中心にまとまることができる時は、往々にして良い結果が出ることが多い。
「存在感」とは、必ずしも実力的に抜きんでているかどうかの問題ではない。例えば前回、悲願の総合初優勝を成し遂げた東海大には、2区を走った湯澤舜(現SGH)がいた。湯澤は大学入学時には走力的に世代トップクラスとは言い難かったが、それでも4年間で着実に力をつけ、初の箱根路にもかかわらずエース区間の2区で堅実な走りを見せた。この背中が後輩たちに与えた影響は小さくないだろう。「初優勝の陰のMVPは湯澤」という声は、関係者の間でもよく口にされていた。
一方で今季の東海大は、入学時に高校トップクラスの実績を備えた「黄金世代」がついに4年生を迎えるが、今季はまだ、その真価を十分に発揮しているとは言い難い。
故障や疲労もあってか鬼塚翔太、關颯人、館澤亨次といった下級生から主力を張ってきた面々が春シーズンは不完全燃焼。彼らがここからチームにどんな背中を見せられるかが重要になってくるだろう。
2校のダークホースが見えてくる
さて、こういった3つの視点で春シーズンを振り返ると、年明けの箱根路で大躍進の可能性を感じさせる2校のダークホースが見えてくる。
それが、法政大と國學院大だ。
まず2校に共通するのは、山に超強力な大砲を備えており、しかもその選手がこれまで以上に力をつけてきていることだ。
前回5区で区間賞を獲った國學院大の浦野雄平(4年)は、関東インカレの2部5000mと10000mで留学生と渡り合い、ともに日本人トップに入った。
浦野は言う。
「『今年の國學院は違う』という姿を見せられたのは良かったと思います。関東インカレでは初めて日本人トップをとれたので嬉しい気持ちはありますけど、自分の中でこれを当たり前にしていかないといけないと思っています。箱根の総合3位以内という目標に向けてチームのレベルアップをしていきたい」
また、同じく5区で3位だった法政大・青木涼真(4年)は1部3000m障害でトップと僅差の2位。本人が狙っていた同種目での3連覇こそ逃したものの、大崩れせず走りきった。
「前々回走った5区で区間賞を獲れたこともあって、正直、前回の箱根では山上りと言われても『また山か……走りたくないなぁ』みたいな気持ちもありました。でも、浦野選手に負けて、やっぱり山をナメていた部分があったなと。だから今季の箱根はリベンジというか、山上りに本気で挑戦したい気持ちが大きいですね」