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リピーターや長期滞在する外国人も
私が取材した日も、夕方までに40人ほどが訪れたが、その多くは外国人だった。イギリス、オランダ、オーストラリア、カナダなどからの夫妻やグループが、レンタカーで山道をたどって来た。マレーシアからは、ピャーさん一家でなんと2組目だった。「だいたい6割は外国人客」と綾野さんは言う。
「素晴らしい!」。カナダのトロントから訪れた40代の友達グループ4人は目を丸くした。「こんなにいっぱいあるんですね。優しそうで、癒されました。名頃は緑に囲まれていて、美しい花も咲いている。川も流れていて、人々は親切で……。想像していた通りでした」と口々に感動を語る。
綾野さんが作るかかしには温かみがある。体は丸っこく、顔のほうれい線がくっきりしているので、にこやかに見える。頬が垂れているのがかわいらしい。
ほとんどの訪問客が柔和な表情になって帰るといい、リピーターも多い。夏期には毎年、近くの民宿に長期滞在して訪れるアメリカ人もいるほどだ。
かかしは名頃の人々の優しさの分身ではないだろうか。何もない辺境で、面白く暮らそうという知恵でもある。
「かかしと一緒に阿波踊りをしました。楽しかったです。また来たい。ありがとう、ありがとう」。ピャーさん一家は、車が見えなくなるまで手を振っていた。
写真=葉上太郎