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外国人に大人気 徳島の“かかし村”は、なぜ「世界の秘境」になったのか

辺境であっても、そこで面白く暮らそうとする智恵が人々を惹きつけていた

2019/06/24
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リピーターや長期滞在する外国人も

 私が取材した日も、夕方までに40人ほどが訪れたが、その多くは外国人だった。イギリス、オランダ、オーストラリア、カナダなどからの夫妻やグループが、レンタカーで山道をたどって来た。マレーシアからは、ピャーさん一家でなんと2組目だった。「だいたい6割は外国人客」と綾野さんは言う。

「素晴らしい!」。カナダのトロントから訪れた40代の友達グループ4人は目を丸くした。「こんなにいっぱいあるんですね。優しそうで、癒されました。名頃は緑に囲まれていて、美しい花も咲いている。川も流れていて、人々は親切で……。想像していた通りでした」と口々に感動を語る。

カナダから訪れた観光客に名頃やかかしについて説明する綾野さん

 綾野さんが作るかかしには温かみがある。体は丸っこく、顔のほうれい線がくっきりしているので、にこやかに見える。頬が垂れているのがかわいらしい。

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 ほとんどの訪問客が柔和な表情になって帰るといい、リピーターも多い。夏期には毎年、近くの民宿に長期滞在して訪れるアメリカ人もいるほどだ。

「お茶でも飲んでいくかい?」

 かかしは名頃の人々の優しさの分身ではないだろうか。何もない辺境で、面白く暮らそうという知恵でもある。

「かかしと一緒に阿波踊りをしました。楽しかったです。また来たい。ありがとう、ありがとう」。ピャーさん一家は、車が見えなくなるまで手を振っていた。

写真=葉上太郎

外国人に大人気 徳島の“かかし村”は、なぜ「世界の秘境」になったのか

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