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品川の南なのに「北品川駅」の下町感

 池袋・高田馬場という山手線西側のターミナルから少し外れた駅を訪れたあとは、山手線をほぼ半周して品川で京急線に乗り換えた。そして1駅南に行けば、北品川駅である。

京急本線の北品川駅
品川駅から各駅停車で2分ほどで到着する

 品川駅の南にあるのに北品川駅とはこれいかに。実はそもそも品川駅は品川にはない。本来の品川とは、旧東海道の最初の宿場町・品川宿。それは品川駅よりもだいぶ南に位置していて、品川宿の北にあるから「北品川駅」という。と、いきなりずいぶんとややこしいのだが、北品川駅も各駅停車しか停まらない。西側(品川方面行)のホーム側にしかない改札口を出ると、そこは日本有数の交通量を誇る第一京浜である。

各駅停車しか停まらない
改札口を出ると、すぐに第一京浜に出る

 品川駅で京急線に乗って次の駅が第一京浜に面する……などと言ったら、別にのどかでもなんでもないと思うだろう。ただ、どことなく駅前の雰囲気は大きなターミナル駅とは違うのだ。だいいち、相対式ホームの片方にしか改札口がなくて、出るとロータリーも何もなくていきなり大通りという時点でちょっとおかしい。第一京浜にかかる歩道橋を渡って次々に駅に向かってくるのは、スーツ姿のビジネスマンではなくて、近くの高校に通う学生たちばかりだ。

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 そしてすっかりお決まりになっている駅の隣の踏切を渡って少し進むと、そこには旧東海道品川宿の町並み(と言ってもその名残、ではあるけれど)が伸びる。これこそザ・下町の風景。地元の魚屋に飲み屋が軒を連ね、祭りの神輿を直しているオジサンの姿も。品川宿散策に来たと思しき外国人観光客の姿もチラホラと見える。

下町感あふれる北品川の町並み
飲み屋も多く、楽しげな雰囲気が漂う

 自転車を押していた地元のマダムは言う。

「第一京浜のほうとは全然違うでしょう。こっちは昔のまんま。少し歩くと屋形船の船溜まりもあるんですよ」

 そうは言っても駅のホームから品川方面を見ると、大きなビルに囲まれている北品川駅。どうやら、大都会と下町の際にある駅なのだろう。

少し振り返ると品川のオフィス街が見える。北品川駅から品川駅まで歩いても10分超だという

 と、このように大都会・東京も山手線のターミナルからひとつ外れるだけでずいぶんとのどかな“下町の駅”がある。たいていは地元の人や高校生たちが行き交うだけの牧歌的な駅である。秘境駅、とは言い過ぎかもしれないけれど、1日に数十万人が忙しそうに行き交って夜になれば酔客だらけのお隣ターミナルと比べれば、隔絶の感。いやはや、やっぱりまあるく東京の中心部を囲んでいる山手線は、“結界”のような存在なのかもしれない。

写真=鼠入昌史