「僕が見本をみせましょう」先生になりきる子ども
なにせこの附属「子どもの家」では、30人以上もの子どもがそれぞれに好きなおしごとにとりかかるわけですから、さまざまな場所でさまざまな活動が行われています。
男の子3人組は紙皿とおりがみとストローを使ってバッタをつくる工作にとりくんでいました。
「難しいじゃん!」
ひとりの男の子が不平をもらします。
「じゃあ、僕が見本をみせましょう」
まるで先生気取りの男の子が手本をみせて、残りのふたりがそれをまねます。
「あれ? 切ってないんですか?」「2本ずつありますよね」とリーダーの男の子は先生になりきります。
お友だちふたりが指示どおりにバッタを完成させると、先生役の男の子は、「バッタの家族のできあがり!」といって、自分の手さげ袋のなかに3匹のバッタをいれました。
水をこぼして失敗しても慌てない
ホチキスの練習というおしごともあります。色紙にホチキスとおなじ大きさの線がいくつも描かれていて、それにぴったりと合うように、ホチキスをはめていくのです。この段階を経て、ホチキスを使用した工作もできるようになります。
ある小さな女の子は、本物の縫い針と糸と布を使って、クロスステッチのおしごとにとりくんでいました。布には方眼の印刷がしてあり、それに沿って糸を縫えばいいようになっています。縫い方の手順を示すため、厚紙と毛糸でできたサンプルも用意されています。先生が手づくりしたものです。それをみながら作業を進めます。
テーブルのうえに濡れてもいいビニール製のマットを敷いて、ジャグから3つのコップに色水を移し替えている女の子もいます。かたわらには小さなフキンが用意されており、ジャグからコップに水を移し替えるたびにジャグの注ぎ口の部分をフキンで拭きとり、水が垂れないようにしています。
ときどき水をこぼしてしまいますが、女の子は落ち着いてフキンで拭きます。まちがったり失敗したりしても慌てないのが、附属「子どもの家」の子どもたちの特徴だと私は感じました。落ち着いて修正し、おしごとをつづけることができるのです。ちょっと失敗したらすぐにゲームをリセットしてしまうのとは大違いです。
満足がいくまで何度も水を移し替えます。おしごとを終えると、ジャグやコップを元の場所に戻します。濡れたフキンは流しでゆすいで、絞って、フキン掛けにかけて干すところまで、子ども自身で行います。