川崎・登戸でスクールバスを待っていた小学生らが相次いで刺された殺傷事件では、犯人は自らの首を切って死亡した。「拡大自殺」の一種であるとされたことから、テレビのコメンテーターやSNSでは「一人で死ねばいい」という言葉が飛び交い、その是非をめぐって論争にまで発展した。

「一人で死ぬ」ことを選ぶ若者は少なくない

 筆者は1990年代後半から自殺や自殺未遂をテーマに取材をしている。最近では、いじめや不適切な指導、パワハラやセクハラによって、子どもや若者が自殺に至ったり、未遂をする人たちの事例について、当事者や遺族の話を聞いている。過去には、自殺の方法が「ネット心中」や硫化水素自殺、違法な薬物のやりとりなどの社会問題になることもあった。

 警察庁の発表では、2012年以降の年間自殺者数は3万人を下回って、昨年は統計を取り始めてもっとも少ない自殺者になった。しかし、若年層の自殺死亡率(10万人あたりの年間自殺者数)がなかなか低下しない。「一人で死ぬ」ことを選ぶ若者は少なくないのだ。地域によっての差もよく聞かれる。そのため、都道府県別に、若者層の自殺死亡率を算出してみることにした。

ADVERTISEMENT

 算出方法は、厚生労働省自殺対策推進室が発表している「地域における自殺の基礎資料」(2018年12月確定値)による各都道府県の年代別自殺者数を、人口推計の「都道府県、年齢(5歳階級)」(2018年10月1日現在)で割ってみた。

©iStock.com

自殺死亡率は1978年以降、もっとも低くなった

「地域における自殺の基礎資料」は、警察庁から提供を受けた自殺データをもとに、厚生労働省自殺対策推進室が集計したもの。自殺者数においては、「住居地」と「発見地」があるが、ここでは、「住居地」のデータを使用した。また、日時についても「発見日」と「自殺日」があるが、「自殺日」を使用している。そのため、警察が「自殺の状況」として発表している数字とは異なる。

 自殺対策推進室が算出した資料によると、2018年の自殺者数は20668人。このうち、「住居地」不明が136人となっている。2012年以降、年間自殺者数は減少し続けている。自殺死亡率は16.5。統計を始めた1978年以降、もっとも低くなった。

全年齢の自殺死亡率