なぜ山梨県で若年層の自殺が多いのか
山梨県は、若年層の自殺死亡率が全国平均よりも高い傾向にある。全年齢の自殺者数は146人。自殺死亡率(17.41)も上位になっている。いわゆる「自殺の名所」はあるが、それが直接の要因ではない。樹海のイメージアップのキャンペーンもしている。
「県自殺対策推進計画」では、「若年層の自殺対策は大きな課題」として、心の健康や自殺の問題について関心を持つこと、正しい知識を身につけるための普及啓発、児童生徒への教育の推進、行政などが実施する取り組みへの参加促進をあげている。
「警察庁のデータには、発見地ベースと居住地ベースの2種類がある。ハイリスク地はあるが、居住地ベースでも高い。統計は、個人が特定できないようにしているため、なかなか分析しきれていない」(山梨県福祉保健部障害福祉課).
「働き盛りの男性の自殺が多くなっている」
30代で見てみると、自殺者数は2580人。やはり最多は東京都(302人)。ついで大阪府(161人)、そして神奈川県(158人)。愛知県(151人)、埼玉県と千葉県(134人)、福岡県(118人)、北海道(116人)、兵庫県(115人)などと大都市圏が目立つ。少ないのは石川県、鳥取県(いずれも8人)、島根県、徳島県(いずれも12人)などとなっている。
自殺死亡率では、最高は香川県(32.35)。そして福島県(26.13)、長崎県(23.52)、青森県(22.65)、大分県(22.50)、岐阜県(22.38)、三重県(22.16)。少ないのは石川県(6.50)、京都府(13.28)、鳥取県(13.33)、神奈川県(14.09)、奈良県(14.18)などになっている。
香川県は全年齢では152人。自殺死亡率は15.30。どちらも全国平均より低い。過去10年間では、自殺者数は、30代では10人から30人前後とばらつきがある。帝国データバンク高松支店によると、2018年度の香川県内の企業の休廃業・解散は256件。前年度に比べて6件少なく、2年ぶりに減少したものの、解散は131件で、過去10年間で最多になっている。
「県では働き盛りの男性の自殺が多くなっている。(企業の休廃業や解散が多かったが)自殺の理由として、健康問題に次いで経済・生活問題が多くなっている。30代に限った啓発はしてないが、労働局や消費生活センター、法テラスなどでも相談先を周知はしている」(香川県健康福祉部障害福祉課)
若者の自殺を取材していると、ハラスメントやプレッシャーによって一時的に追い詰められて、突発的に自殺をするケースがある。その一方で、いじめや虐待などが長期化し、自傷や自殺未遂を繰り返し、自殺に至るケースがあったりする。自殺願望を抱くようになった理由と、自殺の引き金が別の場合もあり、単純ではないケースもある。若年層は中高年ほど自殺者が多くない。また事例の積み重ねがないためか、きちんとした分析がなされてないのが現状だ。