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「自分と父親との関係は普通ではない」

 Aさんはグループワークの中で様々な人や別の家族と出会い、「自分と父親との関係は普通ではない」と気づき、家族に向けていたDVも理不尽なことだと認めることができた。そこからは妻や子供との関係も修復され、今では自分の父親ともバランスのとれた関係を保っているという。

「家族の形は十人十色でも、安心できる環境であることが望ましい」と中村氏は語る ©iStock.com

「機能不全に陥ると、負の連鎖から抜けられないのです。どうせ家族はありのままの自分を受け入れてくれない、家族でいても安心できない、安心できないから余計にコミュニケーションをもたない、もしくは暴力でしか意思を示せない、というマイナスのループです。こうした思考を続けている人は、かなり閉鎖的な価値観の持ち主になっていることが多く、マイナスのループから抜け出す力が足りない。だから、機能不全を家庭内だけで解決しようとしても難しいのです。だからこそカウンセリングなど、まずは家庭外の人間を頼ってみることが大切です」

 ありがちなのは、高学歴で自分に自信のある親が「我が子には人並み以上の暮らしと教育環境を与えてきた」という自負がかえって障壁となり、子供の真摯な思いを受け止められず、機能不全に陥っているパターンだという。

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自分の理想を家族に押し付けてはいけない

親や仕事から受けたストレスをDVという形で発散する患者は少なくない ©iStock.com

「重要なのは自分が正解だと思う理想の形を、家族に押し付けないことですね」

 カウンセリングやグループワークの補助を利用し、親子はこうあるべきだという理想の家族像の追求をいったんやめる。そこからようやく、血縁や戸籍とは違う、本当の家族の絆を考える第一歩が踏み出せるのだという。