物が溢れている実家、アルバムの整理やパソコンやスマホに残るデータの処分法、遺品整理業者の相場、残される家――親子双方の立場から数々の「どうしたらいい?」に答えた『文春ムック 令和最新版 死後の手続き』が発売中。「写真の整理」から「空き家問題」まで、とりわけ気になる10のテーマを一挙に解決!
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物が溢れている実家問題
1 高齢の親が買い物好き。実家には物が溢れている。生前整理を始めるよう説得すべき?(46・女)
まずは、一般社団法人生前整理普及協会代表理事の大津たまみ氏が、「生前整理」の効用を説く。
「生前整理は、人生で立ち止まる踊り場のようなもの。子供が、親の半生を振り返りながら一緒に片づけること自体が大切な思い出になる。子供が主導して親の生前整理を促すのは、とても良いことだと思います」
とはいえ、どうやって促せばいいのか。
2 子供に片づけを勧められるが、「後々自分たちに迷惑をかけないで」と暗に言われている気がして、意欲がわかない。(78・女)
という感情も親からすればもっとも。だが生前整理は親自身のためでもある。
「例えば廊下にものが溢れていると、転倒の原因になりやすい。高齢者の緊急搬送の要因の81・5%が『転ぶ』です(2016年・東京消防庁)。停電で真っ暗になった場合でも、寝室からトイレまで安全に歩けなければならない。整理は重要です」(実家片づけアドバイザー・渡部亜矢氏)
3 自分の写真、整理したほうがいい?(70・女)
今回寄せられた中で、一番多かったのが、実は写真に関する悩み。場所は取らないが、遺された側の心理的な捨てにくさが気になるようだ。
遺品整理などを手がける「アールキューブ・あんしんネット」の石見良教氏も言う。
「自分の写真って年に何回見返しますか? ほとんど見ない人が圧倒的に多い。50代になったら自分の写真は大切な数枚を除いて捨てる、という意識を持った方がいい。自分の写真は捨てられても、親や先祖の写真は捨てにくいですから。
できれば遺影用の写真も選んでおきましょう。人間いつお迎えが来るかわかりません。私は57歳ですが、額縁に入れた遺影を用意しています」
手間を惜しまなければ、「デジタル化」して残す手もある。紙焼き写真をスキャンし、データにするのだ。
「父のアルバムは必要な写真だけをデータで残し、処分した。写真はこれからの時代、データで残すべき。かさばるだけです」(55・女)
一方で、こんな声もあった。長らく母親と音信不通だったという読者だ。
「送られてきた母の遺品に、幼少の私と兄の写真があった。濡れてカビカビになって剝がれそうな箇所を見たとき、母が写真を見ながら泣いていたのかと、胸をつぶされそうになるほど愛情を感じ、わだかまりはなくなっていた」(53・男)