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あのとき、教室に居場所がなかった田村くんに私は何ができたのだろうか

突然暴れ出す彼は「ヤベー奴」として扱われていました

2019/06/21

田村くんは居づらかったんじゃないか

 そもそも、彼はどうしてそんなことになってしまったのでしょうか。

 田村くんのことを思い出したのは、私が子どもの発達について関心を持ち始めたときのことです。そして最近になって、「田村くんはきっと、教室に居づらかったんじゃないか」と考えるようになりました。

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 第三者が、今になって憶測で、そして安易に彼のことを「何らかの症例」に当てはめたくはないのでそうした部分には言及せずに書きますが、おそらく田村くんにとっては教室がとても居心地が悪い場所で、私たちからは大人しくしているように見えていても本当は、ずっとその「居づらさ」を我慢していたんじゃないかと思います。

 それが何かのきっかけで爆発してしまった結果、感情のコントロールがうまくできなくなってしまって、周りに助けを求められる人もいなくて、不安で仕方がなかった。そしてさらに追い討ちをかけるようにクラスメイトから避けられたり、バカにされたり、それがきっかけでまたパニックになって、先生からも怒鳴られてしまうなんて、彼にとっては心に深い傷が残ってもおかしくないくらい、とても辛い経験だっただろうなあ、と思わずにはいられないのです。

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田村君のお母さんが「みんなに謝りたい」

 田村くんは確か、卒業する前に私たちの前から姿を消してどこかへ行ってしまって、残念だけれど本当の気持ちも聞けなかったし、今どうしているのかも分からないし、「何も知らずに傷つけてしまってごめんね」と謝ることも、多分もうできません。

 彼が学校に来なくなった少し前だったか後だったか、田村くんのお母さんが「みんなに謝りたい」と、教室に現れたことがありました。当時はポカンとして聞いていたけれど、「息子が暴れて迷惑をかけて、いつもごめんね。怖い思いをさせてしまって本当にごめんなさい」と話すお母さんの姿は、今になって思い出すとあまりにも痛ましくて、「どんな気持ちであの場に立っていたんだろう」と想像すると、こちらまで胸が痛くなって、つい涙が出そうになるのです。