「自分の子はそんな子じゃない」という親たち
田村くんのような「教室に居づらい子」は、決して少なくないでしょう。だからこそ真剣に、そういう子たちが負わなくてもいい傷を未然に防ぐ方法を考えているものの、これが非常に難しい問題のようなのです。
先日登壇させてもらった、主に教育関係者が多く集まるイベントでこの問題について話したところ、終演後に1人の男性に声をかけられました。男性は教師をしているそうで、やはり「教室に居づらい子」は少なくないことを教えてくれました。
そこで私から「そういう子について、例えば学校側から保護者に『本人が安心して勉強できる場所』を一緒に考えてあげるよう、提案することは現実的に難しいのか」と尋ねてみたのです。すると、彼は少し考えてから「まず保護者が『自分の子はそんな子じゃないんだ、みんなと同じ教室で一緒に勉強ができるんだ』と、自分の子の“居づらさ”を認めようとしない場合があるので……」と難色を示しました。
田村くんがそうであったかは分かりませんが、「一般学級」に通うのが難しい場合、「特別支援学級」や「特別支援学校」に通う方が精神的に落ち着いて勉強ができるケースもあります。しかし、保護者が子どもの状況を正確に理解できていない、または認めようとしない場合や、一般学級以外に入ることに抵抗を持っている場合、子どもには逃げる場所がありません。
子どもを「安心できる場所」に置いてあげる
もちろん「教室に居づらい子」の保護者が全員そうではなく、「子どものことを思って気にかけてはいるものの、子どもが辛い思いをしているかどうかの見極めが難しく、慎重に見守っていた結果、子どもが癇癪を起こすまで決断ができなかった」というケースもあるでしょう。
そんな中で、学校側から「特別支援学級や特別支援学校に通わせてあげた方がいいのではないか」と言われても、保護者が心を整理するまでに時間がかかってしまう気持ちも理解できます。そして最終的な判断を下すのは保護者であるゆえに、学校側としてもそれ以上のことは言えない、というのが実情のようです。
子どもを「安心できる場所」に置いてあげることは非常に重要で、そこで得た成功体験は本人の自信につながり、「できること」がどんどん増えていきます。逆に、子どもにとっての挫折体験やいじめなどのトラウマは子どもの自己肯定感を奪い、自信を失くしたり、一生心に残る傷となる可能性も否定できません。