文春オンライン

連載テレビ健康診断

“合法的に人を殺す”安楽死現場の明るさが気味悪い――青木るえか「テレビ健康診断」

『NHKスペシャル 彼女は安楽死を選んだ』(NHK総合)

2019/06/23
note

安楽死からの達川の笑顔!

 1973年のアメリカ映画の中で想像された「未来の安楽死施設」も、現在の安楽死施設も刑場も、「合法的に人を殺す装置を真面目に、人道的に考えると、こういうふうになってしまう」のだ。その形がたまらなく気持ちが悪い。やっぱり不自然なのだ、「合法的に人を殺す」ということは。それは安楽死が正しいか正しくないか、自分ならどうかということとは無関係に。

©iStock.com

 途中、くじけそうになりながらも見終わったら『サンデースポーツ』が始まった。急に世界が明るい(当たり前だ)。まだ胃の腑に鉛をのみ込んだみたいになってる私に、コメンテーターで出てきた元広島の達川が、ヤクルトの連敗に触れながら「ぼくも監督時代カープ13連敗の記録持ってますから! 今まで健康だったのがそれで血圧ドーン!」。ダッハッハァと笑いながらまくしたてる。安楽死から達川の笑顔、本当に助かった……。その効用を期待してのその日の達川起用ではないとは思うが。

INFORMATION

『NHKスペシャル 彼女は安楽死を選んだ』
NHK総合 6/2(日)放送
http://www6.nhk.or.jp/special/

“合法的に人を殺す”安楽死現場の明るさが気味悪い――青木るえか「テレビ健康診断」

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー