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 しかし、思いあまって安全ピンで刺してしまった人を孤立させてはいけない……と悩みながらツイッターを眺めていたら、「大阪名物パチパチ弁護士」が「とりあえず、ワシは『痴漢を安全ピンで刺した女性がトラブルに巻き込まれたとき対策弁護団』を今設立した。無償で弁護したる。弁護団員も大募集中や。このツイート拡散したら、痴漢被害減るかなあ。減ってほしいわ。」とツイートした。


 私は、反射的に「東京の対応します。」とリプライをした。弁護団は、あっという間に15人になった。

痴漢に安全ピンで反撃したら制度のエアポケットに

「無償で弁護したる」とは大胆だが、それには訳がある。

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 痴漢被害者が、痴漢に安全ピンを刺したことで、傷害罪の加害者となった場合、在宅事件(*)となる可能性が極めて高い。すると、被疑者国選弁護の対象とならず、国費で弁護士をつけることができない。

*……被疑者が警察署の留置所や、拘置所で身体を拘束されずに、捜査が進められる事件

 加害者になってしまっているので、前述の日弁連の犯罪被害者法律援助を使うこともできない。

 痴漢に安全ピンを刺した人は、制度のエアポケットに入ってしまうのだ。

「安全ピントラブル対策弁護団」のスタンス

 今回の「安全ピン」論争を目にした読者が一番気になっているのは、痴漢に対して安全ピンで反撃することは「正当防衛」か「過剰防衛」かということではないだろうか。そして、我々「安全ピントラブル対策弁護団」のスタンスについて気になっている方も多いのではないかと思う。

 安全ピントラブル対策弁護団も、痴漢を安全ピンで刺すことは、誰一人として推奨していない。痴漢した人とは別の人を刺すリスク、感染症のリスクの認識は一致しているからである。

 しかし、痴漢に安全ピンで反撃することに対する見解は「正当防衛だ」「過剰防衛だ」「少年法が適用される可能性が高いので、処罰される可能性が低い」などと、一致しない。安全ピントラブル対策弁護団の弁護士は、在住地域・性別も様々であり、電車の混み具合・揺れ具合・安全ピンの使い方について、想定する場面も違う。

結局、「正当防衛」なの?「過剰防衛」なの?

 たとえば、下着の中まで痴漢が手を入れてきたり、数人の痴漢で一人の被害者を取り囲んで触っているような悪質な場合に、思いあまって、つい安全ピンを取り出してチクリと軽く当てたような事案を想定すれば、正当防衛と考える方に近づくし、衣服の上から触り始めたばかりの時点で、安全ピンをブッスリ刺したり、ピン先でえぐるような場合を想定すれば、過剰防衛と考える方に近づく。

©iStock.com

 また、正当防衛の成立には、「防衛の意思」が必要である。安全ピンで刺した場合、反撃の意思が併存している程度であれば正当防衛が成立するが、防衛の意思を通り越して積極的加害意思があると評価されてしまえば、正当防衛どころか過剰防衛にもならず、傷害罪が成立してしまう。

 このように、ケースバイケースで判断するしかないので、具体的な事件に直面しないと、「正当防衛」か「過剰防衛」かといった結論を出すことはできないのである。

 しかし、具体的な事件が起きるまで待っていたのでは、被害者が増えるだけだ。そこで、被害者の受け皿になるために、我々は、弁護団として名乗りを上げたのである。

 痴漢被害者の心理的孤立を防ぎたい、最終的には痴漢がいなくなってほしいというのが弁護団の願いである。

INFORMATION

 各種援助制度を利用できる場合があるので、全ての痴漢トラブルに無料で対応するわけではないが、痴漢を安全ピンで刺してしまって損害賠償を請求されているといった相談、痴漢を安全ピンで刺してしまったことで傷害罪の嫌疑をかけられているという相談に、意見書を作成して警察・検察と交渉することは無料である。
 詳しくはホームページをご覧いただきたい。

http://anzenpin.jtwla.com/