いまの日本人の死因ベスト5は?
現在、日本人の死因の第1位は「悪性新生物(がん)」、第2位は「心疾患」、第3位は「脳血管疾患」、第4位は「老衰」、第5位は「肺炎」で、いずれも高齢者に多い病気が上位に並んでいます。
とくに強調しておきたいのですが、日本人にがんが増えたのは「日本人が長生きするようになった」ことが主な要因です。戦前は感染症や戦争などで命を落としたために、がんになる年齢まで生きられなかった人が多かったのです。だから私は、長生きすれば誰もが「がん」にかかりうるのだから、この病気だけをいたずらに恐れるのはおかしいと思っています。
いずれにせよ、今後もますます日本人は長生きするようになり、100歳を超えるような長寿者がさらに増えるのは目に見えています。減っていく若者だけに頼って、増え続ける長寿者を支えてもらうのには無理があります。高度経済成長期に設計された年金や国民皆保険(ともに1961年から開始)といった社会制度を、その前提となるあり方から見直さざるを得ないのは当然ではないでしょうか。
長生きという「慶事」が「不安事」になっていいのか
政府は「報告書を受け取らない」などという姑息な手でうやむやに終わらようとするのではなく、年金や国民皆保険の問題をありのまま選挙の争点として引き受けるべきです。また野党にも揚げ足取りのような批判ではなく、人生100年時代に安心して暮らせる年金や国民皆保険の制度がどうあるべきか、真っ向から政策論争を挑んで選挙を戦っていただきたいと願います。
本来、「人生100年時代」と謳えるような国になったのは素晴らしいことで、個々人にとっても幸せなことであるはずです。それなのに、「老後資金が何千万円も足りない」と不安事としてしか語られないのは、なんと悲しいことか。長寿を心から祝えるような社会を子どもたちの世代にバトンタッチしていくことが、私たち大人世代の責務なのではないでしょうか。