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 経団連および東京経営者協会加入の企業283社の平均退職金は2017年6月発表で約2400万円。企業によっては企業年金も支給されるところが多いので、大企業サラリーマンならなんとかなりそうだ。

 親が金持ちの家も大丈夫だ。内閣府「高齢社会白書」(令和元年版)によれば平成29年における70歳以上の世帯主がいる2人以上世帯の平均貯蓄額は2385万円だ。親が平均以上に貯蓄を持っていれば、相続によってなんとか補填ができそうだ。

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「ワンルームマンション投資を考えませんか?」「節税できますよ」

 大企業に勤めているわけでもなく、親が金持ちでもなければどうすればよいのか。住宅は資産だと言われてきた。では定年退職後にローンで買った自宅を売って夫婦2人だけで住むのに十分な小さな家に引っ越せば差額分が足しになると思う人もいるかもしれない。だが、20年、30年ものローンに耐えて取得した家やマンションに資産価値なるものが存在すると考えるのもあまちゃんである。都心一等地にあるマンションやブランド立地の住宅なら別だが、普通のサラリーマンで手が届いたマンションや戸建て住宅の多くは売却できたとしても、買い替えたうえで売却益を貯蓄の足しにできるものはごく僅かであろう。自宅はいずれにしても自分たちが住むためのもの。現金化には大きなハードルがあるのだ。

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 そこであなたに擦り寄ってくるのが不動産屋だ。

「このままでは資産形成ができませんよ。今からワンルームマンション投資を考えませんか」

「アパート投資なら今がチャンスです。実は二度と出ない良い物件があります。ローン? 大丈夫です。おまかせください」

 といった手合いだ。

 都心のワンルームマンションはサラリーマンでも簡単に投資できる不動産として人気だ。利回りはたいてい4%台からせいぜい5%。これを20年から30年程度のフルローンで買うことを勧められる。マンションは資産全体に占める建物割合が高いので償却がとれるし、金利も控除できる。「節税できますよ」も不動産屋の決め台詞だ。

 だが、精一杯背伸びしてローンを組んで投資するにはあまりにリスクがあることに多くのサラリーマンは気づいていない。