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「老後2000万円不足」で“弱者”に忍び寄る不動産屋「投資しませんか」「節税できますよ」

サラリーマンの一念発起は危険です

2019/07/03
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自分の思ったようなワンルームマンション経営などなかなかできない

 金利は変動する。今後のわずかな上昇でもフルローンなどを組んでいるとあっという間に資金計画に狂いが生じる。30年間も入居率が100%のわけがない。ワンルームマンションは競合が多く、新築物件が次々と建ち上がると店子は容易に新しい物件に移っていく。店子がいなくなればあたりまえだが収入はゼロになる。店子がいようがいまいが、ローン返済に加えて毎年固定資産税、都市計画税がかかってくる。自らの給与所得だって保証されたものではない。

 特に定年後は収入がなくなるので節税効果だといっても節税するための所得がないか、とても少なくなってしまうと節税効果を享受することはできなくなってしまうのだ。さらに築20年、30年になると大規模修繕が発生する。ワンルームマンションは修繕積立金が十分でないことが多く、中には運用成績が悪くて修繕積立金を滞納する所有者がでてくる。自分の思ったようなワンルームマンション経営などなかなかできないのが現実だ。

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現金化できないアパートオーナー

 それではアパート投資はどうだろう。これもサラリーマンの小遣い稼ぎとしてはあまり賢い運用ではない。1棟投資が普通なのでワンルームマンションのように他人の都合に左右されにくいという利点はあるものの、アパートはマンション立地に比べて都心というよりも郊外、あるいは路地裏に立地しているため土地の価値が少ない場合が多い。また競合も激しいために築10年を超える頃には店子の賃料がどんどん安くなるのもアパート経営の常。マンションに比べて建物のチープなものが多いため、築年の経過とともに建物の劣化も早まり修繕費用もばかにならなくなる。

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 どちらの資産も売却すれば元が取れると考えがち、あるいはそのようにセールスされるのだが、どちらもあまり良い結果は得られない。ワンルームマンションは戸数が多いため同じ棟で同じ時期に売却が続出する傾向がある。人は考えることがみな一緒なのだ。また周囲に同じような新築ワンルームがどんどん供給される傾向が強いので、価格は下がるし、なかなか売却できない事態に陥っている物件も多い。

 アパートは老朽化が激しく、買手がつきにくい。また土地があるからといって店子をすべて追い出して更地で売却することも借家権の強い日本では容易ではない。結局売れないアパートを抱え、修繕費の負担ばかりに悩んでなかなか現金化できないアパートオーナーは多いのだ。

 投資は株でも不動産でも所詮は金持ちには適わないのだ。彼らは多少運用に失敗してもリスクをヘッジできるだけの資産が豊富にあるからだ。ところがサラリーマンの一念発起だけでは、たった一度のリスクが顕在化しただけでもはや身動きが取れずに立ちすくむことになる。ましてや無理して借金などしようものなら人生再起不能になるから注意が必要だ。ゾウやライオンなどの大きな動物とは異なり、小動物はちょっと出血しただけでも死に至る。投資も全く同じ世界なのだ。

 ではどうすれば普通のサラリーマンでも老後のために2000万円を確保できるのだろうか。