日本サッカー界にとっては、日本人選手が高く評価され、久保の個人的能力を高めるためにレアル移籍は大きなメリットだ。しかし、日本代表、とりわけ東京五輪を控える東京五輪代表の活動については不安が残る。久保の五輪出場はレアルからかなりの制限を受ける可能性があるからだ。リオ五輪の時も久保裕也がヤングボーイズから五輪チームへの参加について認めない旨がリリースされ、最終的に辞退ということになった。久保裕也を大きな戦力として考えていた手倉森誠監督は非常に厳しい決断を突き付けられ、最終的にグループリーグ突破ができなかった。所属クラブは選手の疲労の蓄積や故障にナーバスになり、そのことを憂慮しての判断だが、久保も同様の判断が下される可能性が高い。そのためにもレアルとの契約の際、東京五輪出場についての項目を入れられるかどうか。もっとも久保自身が東京五輪出場に魅力を感じていないのであれば久保の枠に誰かが入るだけになる。
唯一の心配は怪我
唯一の心配は、怪我だ。
サッカー選手の足の感覚は独特で、個性的だ。そのため大きなケガを負うと以前の感覚でプレーできなくなり、苦しむことになる。かつて小野伸二が1999年にシドニー五輪予選で負ったケガの影響で、以前の感覚を失い、苦しんだ例がある。久保は南米選手権では相手のガツガツした当たりにも屈せず、鍛えてきた体幹の強さを見せつけていた。それでも不意や悪意のあるファールがあるので、要注意だ。
「(自分の技術を)出せなかったものもあるかもしれないですけど、出せたものが今できること。やりきったかなと。(ゴールは)入る日もあれば入らない日もある。結果論でしかない。これでサッカーは終わりじゃないので、次に向けて頑張りたい」
南米選手権でグループリーグ敗退が決まった後、久保はそう言った。
まだ、18歳だが、サッカー的には成人しているかのようなコメントだ。自分なりに出来たことを冷静に把握し、同時に物事を達観した見方をしている。
日本にまだ前例がない新しいドアを押し開く存在である久保への注目は、今後さらに過熱していくだろう。そんな中、冷静にかつ堂々とベテラン風に対応する久保の言動には、すでに本物の“薫り”が感じられる。
令和の怪物伝説がこの夏、いよいよスタートする。