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2019/07/02

稲本、宇佐美の移籍と比較すると……

 稲本は、リーグ戦に1試合も出場することなくチームを去った。その状況だけを見れば成功とはいえない。だが、先を考えて獲得した選手が力を発揮できずにチームを離れていくことは欧州ではよくあること。稲本はその後、10年近くに渡って海外でプレーし、日本代表としてプレーした。これは当時のアーセナルが合わなかっただけで、稲本のサッカー人生が失敗したわけではない。

 久保にとって理想的な展開は、レアル・マドリーで活躍する選手になることだ。

 だが、仮にそれができなくても、稲本のように海外でクラブを渡り歩き、サッカー選手としてキャリアを積めれば、それは久保自身にとってはプラスと言えるだろう。

 ただ、久保が稲本や宇佐美と違うのは、13歳までバルセロナの下部組織の選手としてプレーしていたということだ。つまり「出」が違う。日本に逆輸入されて再度、欧州に出ていくわけだが、こういうキャリアはこれまでの日本人選手には前例がない。

子供にも大人気だった ©山田一仁/Kaz Photography

久保個人にとってはメリットしかない

 それゆえに過去の日本人選手と照らし合わせて移籍の成否を予見することは難しいが、久保個人にとってはメリットしかないだろう。

 最初の海外移籍は、よく「身の丈に合ったクラブで」とか、「ステップアップできる国のリーグで」という声が聞かれるが、久保はそういう選手ではない。学びの世界に例えれば、久保はオックスフォード大学から誘いを受けるほど優秀だということだ。世界的に評価されたタレントを持った選手が質の高いリーグとチームで挑戦することは、自然な成り行きだ。

 また、久保は日本人選手が海外で障害となる言葉の問題がなく、スペインのサッカーもよく知っている。何も知らない状況でポンとビッグクラブに放り込まれ、チームやサッカー、言葉に慣れるまで時間を要し、苦労した選手たちとは異なり、容易にチームに溶け込めるはずだ。