ZOZOマリンスタジアムで行われた6月14日の千葉ロッテマリーンズ対中日ドラゴンズ戦は平日ナイターにも関らず1週間以上前に異例の前売り完売となった。3万318人の大観衆。いつもと違う雰囲気を醸し出したのはライトスタンドに陣取った210人の高校生たちだ。美爆音で名を馳せる習志野高校吹奏楽部。同校野球部が準優勝した今春のセンバツ高校野球大会でも話題となった迫力ある演奏を、様々な楽器を駆使しスタンドから千葉ロッテマリーンズ応援団と共に響かせ、マリーンズ戦士たちを後押しした。

千葉ロッテマリーンズ応援団と共にライトスタンドに陣取った習志野高校吹奏楽部 ©梶原紀章

部活動の大半の時間を費やして約30曲をマスター

 吹奏楽部の部長で3年生の酒井悠歌(はるか)さんは振り返る。

「応援団の方たちのように、スムーズな応援を目指すため、本番1週間前になってからは毎日3時間練習を繰り返してきました。昨年の曲に加えて選手ごとの応援曲も担当することになり、全て覚えて瞬時に曲を切り替えるのに、苦労をするところも沢山ありました。でも、みんな練習を重ねて頑張って覚えて練習以外の時でも気が付くといつもみんなで歌ったりしていました。当日の試合では、不安を感じず心の底から楽しんでスムーズかつ一体感のある応援が披露できました。この貴重な経験を今後の活動に生かしていきたいと思います」

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 ファンも注目したこの試みは昨年も実施し今年で2度目。昨年は高校野球部の応援の際にスタンドで演奏される曲が中心だったが、今回は様々な千葉ロッテマリーンズ選手の個別応援歌も事前に練習し果敢にチャレンジ。当日は応援団と息の合った応援を繰り広げた。

 1ヶ月ほど前より、選手の応援歌を含め約30曲。少しずつ練習を積み重ねてきた。6月9日に習志野文化ホールで行われたコンサートが終了してからは部活動の大半の時間を費やして暗譜などの練習を行った。ZOZOマリンスタジアムでのリハーサルも2回。応援団と一緒に3時間ほどかけてじっくりと曲の切り替えのタイミングなどを確認した。

「基本的にどの選手が出場しても応援歌を披露できるように準備をしてきました。当日スターティングメンバーだった選手をはじめ、ベンチ入りしている選手、直前に抹消された選手、怪我等で離脱した選手の応援歌も練習していました。練習をしてきた曲で当日披露していない曲も10曲以上あります……」と習志野高校吹奏楽部顧問の海老澤博さんは話し、生徒たちの努力を称えた。

 それは実に細かく根気のいる作業だった。応援団からトランペットの譜面を入手し各楽器用に1曲ずつ編曲。出来上がった譜面で実際に音を出して譜面が正しいか、聞こえがどうかなどを確認。それを繰り返して完成させてきた。すべては観戦に来る人々と感動を共有するため。人の心を動かすためであれば妥協をするわけにはいかなかった。

「選手応援歌の演奏は今回が初めての取り組みだったので、編曲に入るにあたり、曲の雰囲気と選手の雰囲気を解釈しました。普段応援団ではなかなか使用されないフルートやクラリネットも編成に加わることにより、華やかさや爽やかさが出るように編曲にも工夫をしました」と海老澤さん。新しい試みに果敢にチャレンジし、一つ一つの細かい作業を繰り返して当日を迎えた。出来上がった作品の素晴らしさは言うまでもない。それはスタンドで一緒に応援したファン、グラウンドでプレーをしていた選手たちが感じ取っていた。