約束の一発だった。ブランドン・レアード内野手が6月14日のドラゴンズ戦で日本通算150号のメモリアル本塁打を放った。7回にドラゴンズ先発の柳から放った19号ソロは史上173人目の快挙。そして来日した両親と祖父母の目の前で見せた一発でもあった。

「親から『いつ打つのか? 目の前で見たい』と言われていたんだ。なんとか目の前で打てて良かったよ。こんなに嬉しい事はない。そして来日した時はこんなに打てるとは思わなかった。関わってくれたすべての人への感謝の気持ちしかない」

 レアードはベンチに戻ると嬉しそうに語った。メモリアルアーチを見るべく、あと2本のカウントダウンとなった6月初旬に両親と祖父母が来日。毎試合、スタンドから見守っていた。しかし6月12日のベイスターズ戦で1本打ったものの、あと1本が出ない。5月まで17本放った男の量産ペースはイッキに止まっていた。帰国予定は6月16日。15日のドラゴンズ戦が雨予報で試合の開催は現実的には非常に厳しく帰国の16日のドラゴンズ戦は14時試合開始のデーゲームではあるものの14時までには球場を出発しないと予約している帰国便に間に合わないため試合を見ることは出来ない。だからレアードは14日のラストチャンスに賭けていた。

ADVERTISEMENT

 狙いすましたストレートを一振り。高く舞い上がった打球はレフトのホームランテラスに消えていった。スタンドで見守る両親と祖父母が喜ぶ姿を確認しながらレアードはゆっくりとダイヤモンドを一周した。

日本通算150号のホームランボールを手にするレアード ©梶原紀章

祖父と父から教えてもらった大切な言葉

「Control what you can control」。レアードが大事にしている言葉だ。子供の時に祖父、そして父から教えてもらった言葉で今も大切にしている。祖父も父もアマチュア野球でプレー。兄はメジャーなどで13年間プレーし世界一のメンバーにもなった野球一家。その中で家訓のように言い聞かされたメッセージであった。

「野球には自分でコントロールできるものと出来ないものがある。コントロールが出来ない事を考えていても仕方がない。コントロールが出来ることに全力を尽くす。そういうことかな」 

 言葉の意味についてレアードはそのように教えてくれた。試合の中で審判のストライク、ボールの判定に納得が出来ない事もある。ただ、それは自分ではどうしようもない事。コントロールのしようがない。それに対してイライラをしたりして心を乱すべきではない。行うべきことは自分のスイングをして打つのみ。そして、それは打った後も同じ。意図しないフライを打ち上げてしまっても悔やみ嘆くのではなく、その時点ですべきことは全力で走ること。もしかすると落球をするかもしれない。もちろん、それは願って叶うものではない。必要なのはそういう結果が起きた時に全力で走り、一つでも前の塁に進めているのかだ。