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オリックス新章突入 中川、若月、大城……“nWo”が後半戦のカギを握る!

文春野球コラム ペナントレース2019

2019/07/16
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 プロレスファンの方々、覚えておいでだろうか。1990年代プロレス界を席巻したハルク・ホーガンを中心とした一大ムーブメント、そう「nWo」こと「ニューワールド・オーダー」の存在を。アメリカのプロレス団体「WCW」で巻き起こったこのムーブメントは、「笑ってはいけない」でもお馴染みの蝶野正洋の手によって新日本プロレスにも輸入された。そして瞬く間に日本中のプロレスファンが「nWo JAPAN」によって黒く塗り染められる事となったのである。

 そしてあれから20数年。今度は我々オリックス・バファローズファンの脳内を席巻する新たな「nWo」が台頭している。「N」中川圭太、「W」若月健矢、「O」大城滉二。そう彼らこそオリックス・バファローズの後半戦の鍵を握る「ニューワールド・オーダー」、まだまだ狙えるCS進出への新世界秩序なのである。む、無理やり感が……。

オリックス・バファローズの後半戦の鍵を握るうちの一人、若月健矢 ©時事通信社

交流戦首位打者ルーキーと、打率だけでは語れない若月健矢の活躍

 まずは「N」中川圭太だが、ここは前回の文春野球コラムで木村幹センセイが熱弁されている為、今回は軽めに止めておこう。今季の交流戦首位打者で一躍全国の野球ファンにその名を轟かせた、ご存知「最後のPL戦士」である。前半戦の規定打席まで27打席ほど足りないものの、今季ここまで打率,304はルーキーとしてはじゅうぶん過ぎる成績である。これは仮に規定打席に達していれば打撃5傑入りする成績であり、しかもその65安打のうち、2塁打が14、3塁打が2、本塁打1の長打率.402というのも中軸を任せるに申し分ない。そして何より出塁への執念が凄まじく、土壇場で十数球粘った末、四球を選びサヨナラ勝ちへの扉を切り開くなど、見ていて実にドラマティックな選手なのである。今季のフレッシュオールスターでも4番を務めたルーキーは、間違いなく後半戦オリックスの打撃のキーマンとなる事だろう。

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 そして何と言っても「W」若月健矢だ。打率こそ.183と物足りない数字ではあるが、本業の捕手の方では今季ここまで79試合でスタメンマスク。守備指標「UZR」値で3.5と、こちらは非常に申し分ない数字である。守備ではパ・リーグNo.1捕手と言われて久しいソフトバンク・ホークスの甲斐拓也の「UZR」が3.7である事から間違いなくパ・リーグ1、2を争う守備成績と言えるだろう。実名を出すと問題が大きい為あえて名前は伏せるが、他球団の正捕手のUZR値が「-0.2」や「-2.3」である事を鑑みると、若月は守備で毎試合2点~5点の貢献をしているのと同等の事となる。そう考えれば少々打撃指標が物足りなくとも、若月の存在で勝てている試合が大半という事になる。流石は選手会長と言った所か。

 常に、明るく煌びやかな「太陽」ではなく、ひっそりと、しかし直実に足元を照らす「月」のような存在になりたいと語る彼。後半戦もその月明かりは直実にオリックス・バファローズの足元を照らすだろう、そうCSまでの道案内は彼に委ねられているのだ。

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