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2019/07/02

電撃会談へのカウントダウン

 5月4日と9日、北朝鮮は、4月末に行われた小規模の米韓合同軍事演習に反発する格好で、日本では飛翔体と呼ばれた短距離弾道ミサイルと思われるものを発射したが、これは米国の反応を試すものだったようだ。

 この時、トランプ大統領は「金正恩委員長が約束を守ることを信じている」とツイートして批判を避けた。そして、6月14日のトランプ大統領の誕生日を前にした6月11日には、金正恩第一委員長から親書を受け取ったことを公開し、13日、その親書について文大統領が「とても興味深いものがある」と今回の電撃会談をほのめかすような発言もしていた。


 G20を5日後に控えた23日には、今度は金正恩委員長がトランプ大統領から親書を受け取ったことを北朝鮮対外用メディア「朝鮮中央通信」を通じて明らかにした。それも、親書を真摯に読んでいるように見える自らの写真と、「とても素晴らしい親書だった」という表現までつけて。さらに、27日には、北朝鮮が「朝米対話の期限は年末まで」とする談話を発表し、29日、トランプ大統領からくだんのつぶやきが飛び出した。

北朝鮮の文大統領への痛罵が目くらましに

 それにしても、目くらましとなったのは、北朝鮮の文大統領への痛罵だ。4月に成果なく終わった米韓首脳会談以降、文大統領を激しく罵倒し続けていて、6月27日には、仲介者ではないという烙印まで押していた。元高位層にいた脱北者(50代)は言う。

「北朝鮮が文大統領を批判していたのは、開城工業団地や金剛山観光などの南北事業についても米国の顔色を窺いすぎていて何もできていないという苛立ちからです。2018年4月27日の『板門店宣言』の中にあったことが一つも履行されていませんから。今年の新年の辞で金正恩は開城工業団地や金剛山観光再開についてわざわざ言及もしているだけに、金大中や盧武鉉元大統領時代はそうではなかったと言いたかったのでしょう」

ドナルド・トランプ米大統領(左)、金正恩委員調(中央)、文在寅韓国大統領(右) ©Getty Images

 板門店ではトランプ大統領を真ん中に挟んで、その背中越しに文大統領に話しかける金委員長の嬉々とした姿が印象的だったが、こうした“実”がなければ相手にしないということなのか。南北において特別な思いを抱いているのは文大統領で、多分に浪漫的すぎるのかもしれない。