神泉町交差点から代官山交番前までの旧山手通り界隈は、大使館やお洒落な店が点在する。木立ちは高く、緑は濃く豊かで、空が広い。人気の散歩コースとなっている。
そんな中、旧山手通り沿いにある西郷山公園においしいそばを出すカフェがある。「Green Cafe 西郷山」である。先日文春オンラインに書いた神泉町の「みさわ」に挨拶がてら一杯呑みにいった後、近いことに気がついて、梅雨の晴れ間に久しぶりに訪れてみた。
なぜ代官山のカフェが「そば」を出すのか?
「Green Cafe 西郷山」はNPO法人目黒障害者就労支援センターが運営するカフェである。創業して今年で18年になる。西郷山公園の入り口すぐにある木々に囲まれたカフェである。店内はウッディーな内装で、公園側は一面ガラス張りで明るく開放的な雰囲気である。
公園のカフェといえば、ホットドッグやパスタやカレーなどが一般的。こちらではサラダやサンドイッチプレートなどの他に、そば粉10割、つなぎの小麦粉1割を配合した「外一(といち)そば」を中心にメニューを広くそろえているという。
店長の勝俣智之さんと副店長の佐々木幸(ゆき)さんにその理由を聞いてみると、なかなか深い回答が返ってきた。
カフェをオープンする時にリサーチしたところ、西郷山公園は、ベビーカーで連れ立った公園デビューのママ達がリピートするだけでなく、近隣の年配の方々にとっても散歩コースになっていることが分かったそうだ。ジョギングやポタリングの休憩に利用する人も多いという。
そこで、老若男女に受け入れられる食材として「そば」をメニューに載せることにしたそうだ。知り合いを通じて山形県天童市産のそば粉を仕入れて、押し出し式の製麺機を調達し、「外一そば」のメニューを提供することにしたという。
「もちろん、近くに手頃なそば屋さんがなかったということもあります」と勝俣さんはいう。
たしかに旧山手通り界隈には、お洒落なカフェは多いが、いわゆる町のそば屋がほとんどない。今では「外一そば」のメニューは、週末は天気が良ければ1日50食以上は出る人気メニューに育っているという。『お洒落な街で、気さくなそばははやる』というわけである。