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「名前は知っているけど、今さらね……」だった別府温泉を復活させた“驚きのPR”とは?

インターコンチネンタルに星野リゾート 超有名ブランドが今、続々参入する理由

2019/07/16
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ジェットコースターの台車に温泉を!?

 16年になると、別府市の長野恭紘市長は「シンフロ」をも驚かせる内容のプロモーションビデオを発表した。その名も「湯~園地」。別府市にはラクテンチと呼ばれる遊園地がある。ラクテンチの歴史は古く、1929年「別府遊園」として開園された。だが温泉地のにぎわいが失われていく中で、ラクテンチは経営に苦しみ、事業譲渡が繰り返されてきた。

 市ではこの遊園地のジェットコースターに目を付け、ジェットコースターの台車の中に温泉を入れて、その台車に客を乗せて園内を走り回るという驚くべきビデオを制作して公開。別府は「湯~園地」としてその存在を国内外にPRしたのだ。

別府市「湯~園地」
 

 おまけに長野市長はこのビデオに100万回以上のPV(ページビュー)がついたら実演してみせるとまで豪語。結果は公開後わずか72時間で100万回を超え、17年の7月29日から31日までの3日間、実際にジェットコースターに温泉(実際は泡)を入れて動かしてみせたのだ。この祭りは大変な話題を呼び、東京のメディアなどでも取り上げられた。

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インターコンチネンタル初の温泉スパリゾートを誘致

 こうした自治体を挙げてのプロモーションの陰でひそかに進行したのが、世界的なリゾートホテルブランドの誘致だ。17年6月東京、港区のANAインターコンチネンタル東京の宴会場では大分県広瀬知事、別府市長野市長も臨席する中、「ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパ」のプレスリリースが盛大に行われた。

 このスーパーラグジュアリーリゾートホテルは来月1日に別府市の鉄輪温泉近くにオープンする。客室数89室。62平米から212平米までの客室にはスイートタイプの部屋のテラスに露天風呂が設置される。海側に面した客室からの別府湾の眺めは絶景だ。さらには大分の豊富な海の幸や山の幸をふんだんに使った食事を楽しむレストラン、別府石を贅沢にあしらった大浴場、別府湾に繋がるような感覚になるインフィニティプール、世界のセレブリティを魅了するエステなどハイグレードな設備仕様が話題を呼んでいる。

ANAインターコンチネンタル別府リゾート&スパの外観(撮影:牧野知弘)

 さらにホテルでは大型クルーザーを用意。夜には別府湾でクルーズディナーを楽しむコースも企画しているという。インターコンチネンタルブランドを展開する英国IHGにとって世界初となる本格的温泉スパリゾートは、国内外の富裕層を別府に呼び込むことを目論んでいるのだ。