文春オンライン

「名前は知っているけど、今さらね……」だった別府温泉を復活させた“驚きのPR”とは?

インターコンチネンタルに星野リゾート 超有名ブランドが今、続々参入する理由

2019/07/16
note

高校生たちがタオル1枚になって踊る!

 それは市制作の「NO SIDE-BEPPU CITY」というプロモーションビデオだ。市内の温泉で寛いでいる男子高校生の脱衣カゴ内のスマホに彼女と思しき女子高校生から連絡が来る。風呂あがりにそのメッセージに気づいた男子高校生がいきなりタオル1枚に風呂桶を抱えて市内じゅうを走り回るという、意味不明なストーリー。街中では桶をボールに見立てた様々なラグビーの技が披露され、最後は連絡してきた女子高校生もラグビー場でタオル1枚になり、チーム全員でダンスを踊るというものだ。

別府市「NO SIDE-BEPPU CITY」
 

 最後に別府にやってくる3チームのチームフラッグが出てWELCOMEとなる。このビデオの制作には、市内の高校のラグビー部員や顧問、ラグビー経験のある市役所職員や一般市民など200人以上のボランティアを動員したという。多額の製作費をかけるのではない、手作りのPRからは地元の熱意を十分感じ取ることができる。

 別府は古くからの温泉街であることから、もともと市外からやってくる人たちに対して寛容な土地柄である。だが日本の多くの古びた温泉街は「いなくなってしまった」客を懐かしむだけで、客が再びやってくることをボーッと待っているだけである。対してこの街は自ら積極的に仕掛けることで、国内外に自らの姿勢を曝け出して新たな顧客の獲得に力を入れている。

ADVERTISEMENT

必要なのは「また来たい」と思わせるソフトウェア

 多くの新しい客がやってくると、ホテルや旅館が儲かるだけではない。市では観光客が別府の街に繰り出して遊ぶ新たな仕掛けを考えているという。別府の観光の定番と言えば地獄めぐりだが、夕方5時には閉園となる。商店街が廃れ、飲食店も数が減っているため、遊びに来た客は夜の別府の街に繰り出すことを躊躇してしまう。

 特に外国人観光客、とりわけ欧米からの客は、夜、街に繰り出して深夜まで遊ぶ。今の街には、昔ながらのスナックやカラオケを除いてはその受け皿がほとんどない。地獄めぐりも照明デザイナーなどの知恵を借りて、「ナイト地獄」として様々な演出を試みてもよいのではないか。

©iStock.com

 また別府には数日から1週間滞在するメニューがまだ乏しい。温泉に加えてクルージングやフィッシング、グライダー、トレッキングなど様々なアクティビティを兼ね備えてみてはどうだろうか。

 別府市を訪れる外国人観光客は2017年で約60万人。前年比で33%もの増加をみせている。彼らを受け入れるハコも整いつつある。あとはやってきた彼らを飽きさせずに「また来たい」と思わせるソフトウェアを用意することだ。

 今度は別府市制作の「WELCOME BACK」をテーマにした素敵なプロモーションビデオがみたいものだ。

「名前は知っているけど、今さらね……」だった別府温泉を復活させた“驚きのPR”とは?

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー