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アニメ版からキャラクター像がアップデート

 アニメ版のジャスミンは「王女なんてつまらない。自由に好きな場所に行きたい、自分が選んだ人を愛したい」というマインド。かわって実写版のジャスミンは「王女として婿を迎え王妃になるのではなく、自らが国王となって国を統治したい」マインド。つまり、前者は「制度から解き放たれて自由になりたいプリンセス」で、後者は「男性主権の制度を変え、王として国を治めたいプリンセス」。

 この意識の違いこそ、ジャスミンというキャラクターがアニメ版から実写版への移行で、もっともアップデートされたポイントだと考えます。

左からウィル・スミス(ジーニー)、ナオミ・スコット(ジャスミン)、メナ・マスード(アラジン) ©getty

 ただ、このアップデートにはある“落とし穴”が隠されているのにお気づきでしょうか。

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”世間知らず”の若き王女・ジャスミン

 その“落とし穴”とはジャスミンの未熟さ。

 物語の序盤、王女という身分を隠し、市場を歩くジャスミンは、お腹を空かせた子どもたちを見かけ、目の前の店からパンを取り、彼らに与えます。当然、店主はパンの代金を請求しますが、彼女はお金を持っていない。そこで店主に詰め寄られるジャスミンをアラジンが助け、ふたりはアグラバーの街を駆け抜けて……ってこれ、普通にパン泥棒!

 この時のジャスミンの思考はこうです。お腹を空かせた子どもたちが目の前に→可哀想→あら、こんなところにパンが→さあ、これを食べなさい。

 が、パン屋さんだって原材料を仕入れ、労働としてパンを焼き、それを売ることで日々の生活の糧を得ているのです。生きるために。国王となり、民のために働きたいと志を持つ人間がここに気付かず、商品を無断で取ることに罪悪感がないのはマズい。

©iStock.com

 また、アラジンが正体を隠してジャスミンの居室に忍び込んだ時に彼女は彼にこう言います。「(政治や世界のことを)本を読んで勉強しているの」。なるほど、そうか、お、おう……。

 王女であるジャスミンは、これまで財布を持ったこともなければ、生活に苦しんでいる人々の声を直接聞くこともなかったのでしょう。そんな若き王女が国王になる……これ、アグラバーにとってなかなかの“冒険”です。