ブーム真っ只中のタピオカドリンク。都市部では専門店が乱立しているが、取材班はその一つに潜入。そこで見えた驚きの舞台裏とは――。
都内のとあるターミナル駅に近い繁華街。夜はバーとして営業している店舗を間借りして、大きな鍋を使って、黙々と大量のタピオカを煮る男性がいた。キッチンカーを使って、都内各所でタピオカドリンクを売っている移動販売業者のA氏(40代・男性)だ。
「タピオカは、むちゃくちゃ稼げますね」
A氏がタピオカドリンクの販売を始めたのは、この春から。今年の初めに、友人が一日1000杯のタピオカミルクティーを売り上げたと聞いたことがきっかけだった。
「タピオカは、むちゃくちゃ稼げますね。都内はライバルが増えて売れにくくなっていて、新宿では一日50杯程度。それで6月から埼玉北部を攻めてみたら、バカ売れして、日に300杯くらい売れています。とにかく原価が安い。一杯あたりタピオカが10~20円、紅茶は茶葉からとっても5~10円、それにガムシロップ、牛乳、容器やストローなどを計算に入れても、原価は20%くらいですから」
一杯500円ほどで販売しているので、一日の売上は300杯なら15万円、利益は人件費を引いても一日10万円前後になる。現在タピオカの値段は高騰し、仕入れ値が3倍になったとの報道もあったが、A氏の仕入れ先は意外なものだった。
「大手のタピオカチェーン店のスタッフです。要は”横流し”ですね。ブームでお店は大混雑なのに、スタッフは安い賃金でコキ使われている。スタッフも『横流しは福利厚生みたいなもの』と割り切っているようです。タピオカは確かに高騰していて、ネットでは1キロあたり3000円くらいで取引されていますが、そのスタッフからキロ700円ほどの安価で手に入れています」
A氏はバーの店舗で、タピオカを芯がなくなるまで煮立たせ、よく蒸らした後、手際よくザルに移して、タッパーに入れた。
そのタッパーを、車に乗せて販売する土地に向かうのだが、驚いたのはその保管法。タピオカの入ったタッパーに、ジャブジャブとガムシロップを入れ始めた。まるで漬けマグロのように、タプタプにタピオカを浸している。
「ガムシロが大事なんです。タピオカはこれで蘇ります」
このガムシロが“魔法のタピオカ”を生み出すという。