所有とシェアとの間にある“空白”部分を狙う
GMが、競合他社に先駆けてサブスクを展開したのはなぜでしょうか。リー氏は、その理由を「私たちは、従来型の所有モデル(購入やリース)とウーバーやリフトが提供するようなライドシェアやカーシェアとの間に“空白”の部分があることに気付いた」と前置きした上で、従来型の所有モデルとブック・バイ・キャデラックとの棲み分けについて、
「(ブック・バイ・キャデラックは)キャデラックがこれまで行ってきたことに取って代わろうとするものではなく、それらを補完するものだ。高級品市場ではX世代とY世代のどちらにも“所有すること”に対しての考え方の変化が見られる。何かを持つことよりも、経験することを重視するようになっているのだ。自動車に対しても望むものが変化している。(ブック・バイ・キャデラックは)無形資産ではあるが、そこには機会費用が含まれている。利用者は時間を節約すると同時に、柔軟性を手に入れることができるのだ」と説明しています。
さらに、リー氏は、ブック・バイ・キャデラックの戦略的イニシアティブについて、「X世代とY世代へのリーチの拡大」と「次世代の消費者とブランド間の親和性の構築」の2つを挙げています。
ターゲットはミレニアル世代
米国では、1960年代から1970年代生まれが「X世代」と名付けられたことが嚆矢となり、その後の1980年代から2000年代初頭生まれが「Y世代」、それ以降の生まれが「Z世代」と呼ばれています。Y世代は「ミレニアル世代」とも呼ばれ、インターネットに親しんで成長したことから、他の世代とは嗜好性が大きく異なると考えられ、過去に例を見ないほどにマーケティング調査の対象にされています。GMとしては、こうしたミレニアル世代を含めた30代から50代までの年齢層にサブスクの潜在利用の可能性を見ているのです。
GMは、ブック・バイ・キャデラックを当初ニューヨークのみで展開していましたが、2017年11月から、ロサンゼルスやテキサス州ダラスでも開始して、利用可能地域を拡充しています。