世界最強のサッカー・クラブ、FCバルセロナ(バルサ)が来日した。7月23日に始まる楽天カップでは英プレミアリーグの強豪チェルシー、バルサ出身のイニエスタを擁するJ1・ヴィッセル神戸と対戦する。
バルサはなぜ、これほど強く、世界で愛されるのか。バルサの筆頭副会長であり、スポーツを通じた社会福祉活動を世界で展開するバルサ財団の副会長でもあるジョルディ・カルドネル氏に聞いた。
いい素材を集めるだけでは美味しい料理は作れない
――バルサは昨シーズンも国内リーグでレアル・マドリードなどを抑えて優勝しました。欧州チャンピオンズリーグでは優勝したリバプールに準決勝で惜しくも敗れましたが、過去10年で見れば最も優れた結果を残している。バルサはなぜ、これほど強いのでしょうか。
カルドネル副会長 優秀な選手を集めたチームが強いわけではありません。我々は選手の才能を見つけ出し、正しいエコシステムの中で、その才能を熟成して育てながら、良いチームを作ることに全力を注いでいます。チームが選手を信じ、選手がチームを信じるから良い結果が得られるのです。いい素材を集めるだけでは美味しい料理は作れない。いいレストランには腕のいいシェフがいるものです。
バルサの年俸は(他のビッグクラブに比べて)必ずしも高くありませんが、それでも世界各国から優秀な選手たちが集まるのは「バルサに入れば成長できる」と考えるからです。
――世界中から集まる優れた選手たちに、バルサは何を教えるのですか。
カルドネル副会長 サッカーのスキル、戦術ももちろん教えますが、何よりも大切なのは「チームワーク」「リスペクト(尊敬)」「アンビション(野心)」「謙虚さ」「努力」という5つの価値観を植え付けます。それは壁の張り紙ではなく、クラブ全体の中に空気のように存在する目に見えない価値観です。現在、日本のヴィッセル神戸でプレーしているイニエスタは、まさにその体現者です。彼は誰に対しても謙虚だし、誰よりも努力をする。素晴らしい選手です。
我々はタケフサの選択をリスペクトします
――バルサの下部組織で育った久保建英も、そうやって育てられたわけですね。
カルドネル副会長 タケフサは15歳から数年間をバルサの下部組織で過ごしました。残念ながらFIFA(国際サッカー連盟)の規定で18歳未満の選手は海外のクラブに所属できなくなったので日本に戻りましたが、とても頭のいい子なので、バルサの価値観をしっかり理解していました。
――久保がバルサのライバルであるレアルを選んだのは残念ですね。
カルドネル副会長 いいえ、そうは思いません。「リスペクト」がバルサの価値観ですから、我々はタケフサの選択をリスペクトします。彼がレアルで成功することを祈っています。