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――バルサは日本代表ミッドフィルダーの安部裕葵を獲得しました。

カルドネル副会長 クラブ120年の歴史の中で、初めて日本人選手を迎えることを光栄に思います。安部はスピードがあり、スキルも判断力もある素晴らしい選手です。進化している日本サッカーの象徴のように思います。彼のプレースタイルはバルサに向いています。クラブには、そのクラブに向いた選手とそうでない選手がいます。例えば、イブラヒモビッチは間違いなく優れた選手でしたがバルサのサッカーには合わなかった。安部はバルサに向いています。

日本代表ミッドフィルダー・安部裕葵 ©文藝春秋

バルサの5つの価値観をトップチーム以外でも広める

――バルサと一緒に来日した「バルサ財団」は22日、アリーナ立川立飛(東京都立川市)で「ソーシャル・インクルージョン・フェスティバル」を開催しました。狙いはなんですか。

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カルドネル副会長 日本各地から集まった、障がいを持つ少年少女と健常な子どもたち約200人が参加して、「一緒に」サッカーを楽しみました。最後は全員が笑顔になり、素晴らしいイベントでした。

 バルサ財団の仕事は、先ほどご紹介したバルサの5つの価値観をトップチームのゲーム以外の形で社会に広めることです。そのために「FutbolNet(フットボール・ネット)」というメソッドを開発しました。

7月22日、立川で開かれた「FutbolNet」のイベント

 このメソッドは、男女も国籍も、障がい児か健常児かも関係なく、全員が完全に受け入れられる空間を創出することを目的にします。全員が楽しみ、経験を共有し、誰も疎外されたと感じずに個性を表現できる機会を提供するのが狙いです。だから「インクルージョン(包摂)」なのです。

 バルサの選手やコーチがこのメソッドを教えれば、誰もが耳を傾けてくれます。彼らには大きな影響力がある。世界の50カ国を上回る国々で14万6,000人の少年・少女が参加し、素晴らしい成果を上げています。

――例えば?

カルドネル副会長 例えば、レバノンで難民の子供を対象にした時には、両親を亡くした子供や、過酷な体験で不眠症になっている子供も数多く参加しましたが、「48%の子供の自尊心が高まった」という調査結果が出ました。学校単位でもメソッドを実施していますが「いじめが大幅に減った」という報告もあります。レバノンとシリア、パレスチナとイスラエルの子供たちが参加したセッションでは、プログラムが終わると、子供たちは互いに握手をし「友達になろう」と決意しました。

「偏見」は大人の資産で、子供にはありません。広場の真ん中にボールがあり、そこにボーイズ&ガールズがいれば、始まることは世界中、どこへ行っても同じです。誰が勝つ、誰が負ける、ではなく、彼らは一個のボールを使ってハピネスを見つけ出します。ボールは最強のツールです。