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皇居の防空壕を設計した軍人
横道がすぎてしまった。もとに戻ろう。
今回、「油谷これくしょん」でとりわけ印象深かったのは、「皇居の防空壕の設計者・佐々哲爾中佐」という展示だった。佐々(最終階級は大佐)は秋田県出身の軍人であり、陸軍築城本部研究部長のとき、皇居の防空壕を設計したという。
皇居の防空壕といえば、終戦の「ご聖断」が下された場所だ。それが秋田と関係しているとは、まったく知らなかった。
展示品には、家系図や軍服だけではなく、大正年間の夏季休暇日誌なども含まれている。油谷氏が遺族から引き継いだのだろう。こういうものがさり気なく置かれているから侮れない。
現地に足を運んだからこそ、こうしたものに出会える。平田篤胤、石川達三、東海林太郎といった名前に、佐々哲爾も付け加わった。知識が有機的に結びつく面白さ。これこそ、旅行の醍醐味だ。
ほかの生活用品についても、それぞれの分野に詳しいひとがみれば新しい発見があることだろう。日本酒のラベルなども、現在とデザインが違っていて目を引かれた。「日本一」のコレクションを埋もれさせてはならない。ぜひグループでも足を運んでみてほしい。
写真=辻田真佐憲