8月1日から開催されている国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」に出品された、慰安婦像をモチーフにした「平和の少女像」。この展示をめぐって、論争が巻き起こった。主催者側は「『表現の自由』という現代的な問題について議論するきっかけにしたい」と説明したが、公金が使われた芸術祭に政治的な作品が出展されたことについて疑問を呈する声も多く、開催直後から主催者側に抗議の電話やメールなどが殺到。結局、芸術祭の実行委員会は8月3日かぎりで展示を中止することを発表した。
慰安婦問題をめぐっては、実は5年前にも国際的文化イベントで騒動になったことがある。フランスで開かれた国際漫画祭で、韓国政府が自国の政治的主張を強く打ち出した「慰安婦企画展」を開催したのだ。「表現の自由」と「政治プロパガンダ」という問題を考えさせられるレポート、「フランス現地特派ルポ 韓国『慰安婦マンガ祭』の許されざる全内幕」(2014年2月13日号)を、ここに全文公開する。
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伝統ある芸術祭に出鱈目な反日コンテンツ
「日本の戦争といえば、ヒロシマ・ナガサキの原爆くらいしか知られていないところに、慰安婦という日本の“被害者”を知らしめた。観た者には“強制連行された慰安婦”の悲劇の人生が、巧みなアート作品の印象と共に刷り込まれたはずです」(在欧ジャーナリスト)
韓国政府がついに出展に漕ぎ着けた欧州最大級の漫画フェスティバル「アングレーム国際漫画祭」。
フランス・パリからTGVで南西へ2時間半。城塞都市アングレームで毎年開かれるこのフェスティバルは、今年で41年目を迎えた。「カンヌ映画祭の漫画版」とも言われ、今回は1月30日から2月2日までの4日間。教会や市役所、裁判所など主要施設が会場となり、特設テントが至る所に設営され、コンクールや展覧会、見本市、即売会が開かれた。期間中、街は内外からの観光客で溢れ、昨年は人口約4万人の街に20万人が押し掛けた。
だが、漫画を通じて文化交流を図るはずの伝統ある芸術祭を、韓国政府が反日宣伝パフォーマンスに利用したのだ。慰安婦をテーマにした作品を集めた「散らない花」と題された慰安婦企画展。会場は街の中心部にあるアングレーム国立劇場の地下。教会かと見紛うような石造りの会場を訪れると、そこはまさに出鱈目な反日コンテンツで溢れていた――。
まず観客を出迎えるのは、入口すぐの大型ディスプレイに流れるアニメーション。巻頭グラビアでも紹介したようにコンピュータグラフィックスを駆使した美しい3Dアニメだが、その内容は穏やかではない。
日本兵が少女にアヘンを注射するアニメ
物語は、ある眼鏡をかけた老女の回想シーンから始まる。10代半ばの少女時代、日本統治下の朝鮮で「日本の千人針工場で働かないか」とそそのかされた彼女は、他12人の少女たちと一緒に連行される。長旅の末に着いたのはインドネシアの日本陸軍基地。少女は粗末な葦簀張りの「陸軍娯楽部」に入れられ、いきなり酔ったドジョウ髭の将校により強姦される。さらに、いかにも凶悪そうな目つきの兵士にアヘンを注射され、中毒に。抵抗できない状態の少女を、日本兵は「列をなして」やって来ては「服も脱がず」に次々と犯す。少女は自殺を図るが死にきれない。
終戦になると、日本軍は証拠隠滅のために少女たちを順々に銃殺する。主人公は連合軍の攻撃により間一髪助かるが、家に帰っても両親はすでに死亡しており、一人で何カ月もかかってアヘン依存症から脱出する。
そこで暗転し、再び老女が登場。彼女は優しい声で訴える。
「体は奪えても心は奪えない。そういう気持ちで生きてきたんだよ」