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 そして画面には、物語のベースとなった慰安婦の写真が映し出され、このアニメが実在の人物の証言に基づく“ノンフィクション”であることが強調される。

『Her Story』という11分ほどのこの小品は、会場エントランスで繰り返し流されているだけでなく、別会場で行われたアニメ上映会でも流された。上映会場は300人の観客で溢れていたが、終了と同時に観客からは大きな拍手が起き、中には涙ぐむ者もいた。

 ベルギーから来たという20代の漫画家が話す。

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「グラフィックが秀逸だった。慰安婦のことはこの展覧会を観るまで知らなかったけど、話に説得力があった。政治的プロパガンダではなく、戦争を生きた女性の人生を描いている。日本を糾弾しているわけじゃない。『ゲン・ヒロシマ(はだしのゲン)』と同じだ。日本の作家が原爆のことを描いてもアメリカが否定したり反論する必要はないだろう? 全て過去の話だ」

日本軍による婦女暴行を諷刺した作品ばかり

 だが、この動画の存在を知った評論家の櫻井よしこ氏が半ば呆れてこう話した。

「慰安婦をアヘン中毒にした、或いは、証拠隠滅のために銃殺したなどは、荒唐無稽な話です。慰安婦の強制連行が無かったのは歴史の事実。長年の各機関、多くの歴史学者の調査によっても、具体的証拠は一切発見されていません。日本が強制を認めたとされる河野談話も、元慰安婦への杜撰な調査に基づいて発表されたことがすでに明らかになっています」

 奥の部屋に展示されていた十数点の漫画や同様に、日本軍の軍人による婦女暴行を諷刺した作品ばかりだ。

 その中の「70年の悪夢」では、日本兵は野蛮な“犬”として描かれている。

日本兵が犬として描かれた「70年の悪夢」(Festival International de la bande dessinée d'Angoulême 9e Art+ société organisatrice du festival)

凶暴な野犬=日本兵が少女に襲いかかる

「遠くに行ってはダメよ」という母の声が聞こえる中、少女が草原で花摘みに夢中になっていると、10匹以上の野犬が現れる。少女は牙を剝いた野犬に追われ、取り囲まれ、襲われる。

 ぐったりと倒れた少女の服はぼろぼろに引き裂かれ、怖ず怖ずと顔を上げるとそこは草原ではなく旭日旗に覆われた世界。野犬は軍服に刀差しの軍人の恰好になっており、牙の間からよだれを垂らし吠え立てる。

 そこで彼女は夢から醒める。年老いた慰安婦の夢だったのだ。老女は「遠くに行ってはダメよ」という母の言葉を思い出し号泣する。