フランスは韓国の対日歴史戦略の重点国
「韓国の作品は隠喩を用いた抑制の利いた表現のものが多かった。事前のフランス側との交流からヨーロッパにおける芸術祭の趣旨を忖度したのでしょう。それが功を奏した。当初、企画展の副題には、“これが証拠だ”という文言がありましたが、これも主催者側の指示ですぐ消しています」(前出・在欧ジャーナリスト)
逆に大惨敗を喫したのが、日本の「論破プロジェクト」である。メンバーの4人がブースを借り、一般人が描いた77の“正しい慰安婦作品”を展示、韓国を“論破”しようと会場に乗り込んだが、準備の段階で4人が食事のために離れた隙に主催者側にブースを撒去され、ほとんどの作品を没収されてしまったのだ。
その一部始終を見ていた産経新聞ロンドン支局長の内藤泰朗氏が話す。
「彼らが記者会見するというので15分ほど前に行ったら、主催者側のニコラ氏が来て掲げてあったバナーを見て、『許せない』と言ったのです。バナーには『従軍慰安婦はいない』と書かれてあった。彼は『Shit!』と言いながらバリバリと撤去していました』
その後、論破プロジェクトのメンバーは食事から戻って来たが、
「『お前ら何やっているのか、やめろ』『こんな作品は糞だ』と。『私が認めないものは一切認めない』というのです。反論しましたが、聞く耳を持ってもらえなかった」(論破プロジェクト代表の藤井実彦氏)
一見、一方的な撤去にも見えるが、重大な問題が出品作品の中にあった。
「作品の中に“鉤十字”の表現があり、事前に注意されてはいました」(同前)
ナチスのシンボルであるハーケンクロイツが、ヨーロッパでどれだけ“不適切な表現”であるかについて、彼らの知識は不足していた。
京都大学名誉教授の中西輝政氏が解説する。
「フランスはアメリカとともに、韓国の対日歴史戦略の重点国です。それはフランスがナチスの被害国であり、世界的に人権を重視する国柄だから。韓国は合理的にフランスを選び、国を挙げて広報活動を金に糸目を付けずにやってきた。
私はこういう事態を予測し、我が国も早く手を打たないと抜き差しならない孤立状態に陥り、世界中で大変屈辱的な、事実に基づかない対日批判の土壌が作られると言ってきたのですが……残念な気持ちです」