熱中症による死亡リスクが高い「老老介護」の家庭
我が国は65歳以上が総人口に占める割合である「高齢化率」が20%を突破している。独居老人と同様に、急増する「老老介護」の家庭では、極めて熱中症死亡のリスクが高いといえる。
8月13日には、神戸市垂水区の文化住宅で、56歳と53歳の姉妹が相次いで亡くなっているのが発見された。
地元警察関係者が話す。
「妹は13日の午前5時過ぎに、コンビニへ新聞を買いに行き、玄関先まで帰って来て倒れたようです。姉は2階の自室の布団の上で亡くなっていましたが、司法解剖の結果、前日12日の昼頃に死亡したことがわかりました。80代の姉妹の母親も、12日夕方に熱中症で救急搬送されています。同じく80代の父親は認知症で、姉妹もなんらかの理由で職に就けない状況だったそうです」
通報を受け、午前8時ごろに警察署員が駆けつけたときには、家の窓は全部閉め切られ、室内はかなりの高温状態。エアコンは壊れていたという。
神戸市は8月10日から14日まで猛暑日が続いた。
「12日の最低気温は29度。朝なのに昼間と変わらない気温でした。そんな中を脱水症状のまま歩いてしまったので一気に悪化したのでしょう」(星教授)
もっと悲惨な「認認介護」の現場も……
もっと悲惨な例もある。港区高輪では8月12日、帰宅した無職の次男(45)が、母親が熱中症で倒れているのを発見。病院へ運ばれたが死亡した。認知症の父親(87)も脱水症状で入院。さらに父親の兄(89)が死後10日前後の状態で発見されたのだ。ここは老老介護に加えて、認知症患者が認知症患者を介護する「認認介護」の家庭だった。
「一緒に住んでいる次男を含めて、奥さんが全部面倒をみていました。その奥さんも、実は8月3日に認知症の疑いで診察を受けていたのです。8月の初め頃、『2階のエアコンが壊れちゃった』と話していて、熱中症にかかる何時間か前に、近所の電器屋へ扇風機を買いに行ったようです。扇風機を買ったその日に亡くなるなんて、本当に気の毒ですよ」(近所の住民)
以前は町内会にも入っていたが、最近は近所づきあいもなかったという。
「要介護者がいる家庭では、介護している側の負担が一番大きい。しかも、その人が倒れてしまうと、家族全体が共倒れになってしまう。これは今一番の問題です」(三宅教授)