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歳をとればとるほど、少しの油断で”意地悪な爺さん”に落ちる

――というと?

武田 私は先生役を長いことやってきましたが、ずっと生徒になってみたかったんです。「お願いします!」と大きい声で教えを乞い、「ありがとうございました!」と畳に額を擦りつけてお礼を言う。そんなことをやっていると、体が快調に回り始めましてね。歳をとって曇ってきた心が、晴れていったんです。

 あのね、歳をとればみんな、日本昔ばなしの“花咲か爺さん”になれると思っていますが、大間違いなんですよ。

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――“花咲か爺さん”ですか?

武田 そう。正直で優しくていつもニコニコしている“良い爺さん”。歳を重ねると周囲は気を使ってくれるようになるでしょ? それに安住してしまうと「自分が正しい」とか「最近の若い奴はなっとらん!」なんていううぬぼれで心が曇る。そうなるとあっという間に“意地悪な爺さん”になってしまうんですよ。歳をとればとるほど、少しの油断で “意地悪な爺さん”に落ちる。年寄りはそんな崖っぷちを歩いていると自覚しなければいけません。

 

――武田さんには“良い爺さん”のイメージがあります。金八先生がそのまま歳を重ねたような……。 

武田 うーん、自分では分かりませんけどね(笑)。ただ、知らないことは知らないと言えるよう、常に謙虚でいようと心がけています。

 あとは口が裂けても、若い人の前で絶望の条件を言ってはならない。爺たるもの、自分は明日死ぬかもしれないけど、明日生まれてくる子には「お前は自分の分だけ生きていけばいいんだよ」と言わなくてはいけない。大変でも、嘘八百でも、「ハイカラな花を咲かせましょう」と、枯れ木に灰を撒き続けるのが年寄りの仕事なんです。