32年間続いたドラマ「3年B組金八先生」(TBS系・1979~2011年)シリーズは2011年に終了したが、テレビの中の武田鉄矢(70)はいまだ“金八先生”のイメージそのままだ。しかし、プライベートでは61歳の時に心臓の手術を受けて人工弁を入れた。その関係か、精神的には気持ちが常に落ち込むようになり、鬱ウツとする日々が続いたという。
そこで始めたのが合気道。65歳から始めて、今でも若い人に混じって、週2回道場で“生徒”として汗を流しているという。老後2000万円問題や孤独死など暗いニュースを眼にすることが多い昨今だが、”楽しく歳を重ねるコツ”を聞いた。
長く一緒に暮らしてきて、女房の俺への叩き方が変わってきた
――合気道を始めて、日常生活に変化はありましたか?
武田 驚くほど変わりましたよ。いちばんは夫婦関係ですね。
――今年で結婚46年目ですよね?
武田 ずいぶん長く一緒に暮らしてきましたが、だんだん女房の俺への叩き方が変わってくるんですよ。コーヒーを飲んだカップを窓辺に置いたら「輪染みがつく!」って叱られて。洗濯物が部屋に干してあったから、ベランダに出してあげたら「何で外に出したのっ!? 夜露に濡れるじゃない!」と叱られて。茶碗を洗っても「底洗ってないね」とか。もうね、何やっても怒られるんですよ(苦笑)。
――それは……、大変ですね。
武田 ほんと、参っちゃうよね……。私は貧しい家に生まれたもんですから、不潔に強いんですよ(笑)。だから、そんなに潔癖すぎると息苦しくなるだろうと女房に説教してみるんだけど、「話が長い!」とか言われるわけです。世間では15、16歳のガキ相手に説教させたら日本一うまいとか言われていても、女房には職業で磨いたものが何一つ効かないわけです。そんな時に自分の威力の衰えを感じて合気道道場に行くと、先生が武道論を語り始めるんです。
――どんな武道論なんですか?
武田 それが俺たちの喧嘩を見たような武道論でしてね。先生が弟子たちを並べて技の説明をするんです。「逆らっちゃいかん。風が吹いてきたら静かに吹かれましょう。頑丈な木は折れますが、柳は折れないでしょう。相手が押してくるんだったら押されなさいよ。相手が引くんだったら引かれなさい。ただ、その時に真後ろに下がらず、わずかに横に受け流す。そこから技が始まるんですよ」って。夫婦喧嘩での悔しい気持ちを思い出して、なんか涙が出てきましてね(笑)。