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ファンタジー路線と現実路線の2本柱を行き来

――昔は、視聴者の憧れの世界が描かれることの多かったテレビドラマですが、いまの視聴者にとってはどういうものなのでしょう?

岡田 難しいですね……。僕が脚本家になったころは、ドラマには「現実を忘れるもの」と「身につまされるもの」の2種類あると言われていました。僕は初めて連ドラを全部書いたのは1994年で、「南くんの恋人」でファンタジー的なものを描き、「若者のすべて」は現実路線を書きました。その2本の柱を行き来していれば、飽きずに書き続けられるだろうと思ったんです。当時は恋愛ドラマ全盛期だったので、そうじゃないポジションを2つ作ろう、と考えたんだと思います。北川悦吏子的でないものを(笑)。そこと勝負しても仕方ないので。

――いま放送中の「セミオトコ」も、現実を忘れるものですね?

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岡田 はい。恋人が小さくなるとか、セミになるとか、現実にはあり得ないんだけど、その設定だからこそ描けることがあります。一方、「身につまされるもの」は、作家の人生観や世界観、人間観が問われます。放っておいても、主人公の生き方なりセリフに滲み出てきてしまう。僕は今年60歳になるんですが、「そして、生きる」は久々にガツンと、いま自分が思っていることの全てが出ている感じがします。

瞳子(中央・有村架純)、ハン・ユリ(右・知英)、清隆(左・坂口健太郎)はボランティアで濃密な時間を過ごす。

――岡田さんが脚本を書くときに一番大事にしていることは何ですか?

岡田 気をつけているのは、登場人物のなかに自分を〝いないように〟するということです。僕自身が思っていることではなく、あくまで、登場人物たちの言葉や考えであること。自分をどこかに置いてしまうと、それと敵対するものが出てきてしまう。そういうバランスがあまり好きではないので、基本的に自分はいなくていいと思っています。

――フェアでいたいということですか?

岡田 はい。登場人物の全員に対してフェアでいたい。全員の気持ちをフェアに考えたいんです。今回のドラマでも、主人公に苦言を呈する人を嫌なふうに描くのは簡単なんですが、その人の言っていることも真っ当だと思えるふうにしたいんです。

 

――だから、岡田さんのドラマの登場人物は、皆、魅力的なんですね! どの人の立場もわかるので、応援したくなったり、やるせなくなったりします。

岡田 そうですね。実人生でも、苦手な人はいるけれど、悪党みたいな人のせいで自分の人生が台無しになったというような経験はありません。うまくいかなかったことは全部自分のせいだと思うので……。こんなことを言うのはちょっと恥ずかしいですが、彼ら(登場人物)は本当に生きていると思っているところがあります。できることなら、どのドラマも続きをやりたい。普通に生きていると、身近な人のことしかわからないし、体験できることも限られますが、知らない人の人生を見せられるのがドラマだと思います。人生に最終回はないように、そのまま彼らの人生が続いていくというような最終回が、僕は好きです。

――岡田さんのドラマに出てくる人々のことを時々ふと思い出します。「最後から二番目の恋」の千明は、「ひよっこ」のみね子は、いまごろどうしているかなとか(笑)。

岡田 それはとても嬉しいです!

写真:杉山拓也/文藝春秋

INFORMATION

「連続ドラマW そして、生きる」

8月4日(日)WOWOWプライムにて放送スタート(全6話)第一話無料放送。
毎週日曜夜10時
脚本:岡田惠和
監督:月川翔
出演:有村架純、坂口健太郎、知英、岡山天音、萩原聖人、光石研、南果歩 ほか
https://www.wowow.co.jp/dramaw/ikiru/